岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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緊張感が張り詰めた圧倒的パワーのスリラー映画

2024年06月19日

ありふれた教室

© if… Productions/ZDF/arte MMXXII © Judith Kaufmann, Alamode Film ©BorisLaewen ©ifProductions_JudithKaufmann ©Hanna-Lenz © Johannes Duncker

【出演】レオニー・ベネシュ、レオナルト・シュテットニッシュ、エーファ・レーバウ、ミヒャエル・クラマー、ラファエル・シュタホヴィアク
【監督・脚本】イルケル・チャタク

不寛容が引き起こす不都合

ドイツの教育制度は、13年制の一貫校を選択した児童以外は、6歳で入学して10歳までの4年間を基礎学校で学んだ後、10歳で将来の岐路に立つこととなる。選択コースは、ハウプトシューレ(5年制の卒業後就職コース)、実科学校(6年制の卒業後中級の職に就くコース)、ギムナジウム(9年制の大学進学希望者のコース)の3つだ。

本作の舞台となる中等教育学校は、一般庶民や移民の生徒が多いハウプトシューレに通う1年生(10歳)が主体となるお話だ。学校の教育方針は、「割れ窓理論」に基づきどんな小さな問題にも罰則を設け厳密に対処する「不寛容方式」をとっている。

学校が舞台ではあるが、いまや世界に蔓延る「不寛容が引き起こす不都合」を描いた作品であり、極めて現実的で恐ろしく現代的な、いまの世の社会の縮図を表している映画だ。

校内で多発する盗難事件。受け持ちのクラスの移民の生徒が犯人と疑われたことに憤りを感じた新任教師のカーラ(レオニー・ベネシュ)は、一計を案じて自分のジャケットに財布を残して席を離れ、パソコンのカメラで隠し撮りをする。実際に財布は無くなるが、パソコンには特徴のあるシャツを着た人物がジャケットに手を伸ばしたような映像が映っていた。

カーラは、同じような柄のシャツを着た事務員のクーン(エーファ・レーバウ)を疑うが、彼女は激怒する。

このことをきっかけに、校長、同僚教師、生徒、保護者を巻き込んで、事態はどんどん悪い方向へ進んでいく。カーラは生徒の立場に寄り添った「良い先生」ではあるが、自分のクラスの生徒を守ろうとするばかりに、決定的な証拠も無しにクーンを追い詰めてしまう。

何がよくて何がいけないのか?隠し撮りは確かにいけないことだが、たった一度のボタンの掛け違いで理性的な判断を鈍らせ、感情論に負けてしまうのか?

緊張感が張り詰めた圧倒的パワーのスリラー映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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