岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

正義というものの不確かさを描いた傑作

2024年06月19日

ありふれた教室

© if… Productions/ZDF/arte MMXXII © Judith Kaufmann, Alamode Film ©BorisLaewen ©ifProductions_JudithKaufmann ©Hanna-Lenz © Johannes Duncker

【出演】レオニー・ベネシュ、レオナルト・シュテットニッシュ、エーファ・レーバウ、ミヒャエル・クラマー、ラファエル・シュタホヴィアク
【監督・脚本】イルケル・チャタク

確かな答えが見いだせない人間社会の複雑さ

ドイツの新鋭イルケル・チャタクが監督した「ありふれた教室」は本年度屈指の傑作であり、学校を社会の縮図として描いた問題作である。

主人公の若手女性教師カーラが赴任してきた中学校で盗難事件が相次ぎ、抜き打ちの生徒の持ち物検査まで行われる。

校長らのやり方に反発したカーラは自ら真相を究明しようと隠し撮りを決行する。しかしその行為が学校を揺るがす大騒動に発展していく。

教師間での意見対立、生徒を疑い密告まで促したことへの保護者からの非難、そして生徒たちの反乱。

リアルな描写で教育の現場に於ける様々な問題点を炙り出し、スタンダードサイズの画面が濃密なドラマに一層緊迫感を与え息苦しくなるほどだ。

それぞれの立場で異なる正義というものの不確かさ、数学のように確かな答えが見いだせない人間社会の複雑さを、99分の上映時間に凝縮して描いた必見の社会派ミステリー。怪奇現象を描いた上出来のホラー映画が束になっても敵わないほどのリアルな恐怖に圧倒される。

イルケル・チャタク監督はトルコ系移民の息子として生まれた、数々の受賞歴のある世界的に注目を浴びる若手監督で、「ありふれた教室」は長編4作目となる。

脚本もヨハネス・ドゥンカーとの共作で、2023年ドイツ映画賞の脚本賞を受賞。カーラを演じたレオニー・べネシュもドイツ映画賞の主演女優賞を受賞した。

2023年ベルリン国際映画祭(パノラマ部門)2冠、2023年ドイツ映画賞では作品賞を含む5部門受賞。

さらに2023年ナショナル・ボード・オブ・レビュー外国映画部門トップ5に選ばれ、2024年米アカデミー賞国際長編映画賞にもノミネートされた。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

観てみたい

100%
  • 観たい! (6)
  • 検討する (0)

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

ページトップへ戻る