岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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ションベン臭くて適度に猥雑な、絶好調の喜劇映画

2024年06月18日

喜劇役者たち 九八とゲイブル

©1978松竹

【出演】愛川欽也、タモリ、秋野太作、佐藤オリエ、東てる美、あき竹城、赤塚不二夫
【監督】瀬川昌治

タモリさんの真骨頂。テレビでは絶対やれない芸あり

「ロイヤル、思いやる」プロジェクト~第2回返礼リクエスト上映~の2本目は、1978年3月封切りの松竹映画『喜劇役者たち 九八とゲイブル』だ。同時上映は不良兄妹と刑事ものの『夜が崩れた』で私が大学1年のとき。映研に入って「芸術映画」に目覚めていった頃で、純然たるプログラムピクチャーは観る対象から外れていた。

DVD化もされてなくサブスクもない幻の作品となっていたが、今回初めて劇場で観ることができた。缶替わりの前後で多少フィルムに雨が降ってはいたものの、ほぼ退色はしておらず、綺麗な状態で観ることができた。

当時の松竹喜劇は、山田洋次監督の寅さんシリーズを中心とした洗練されたハートウォーミングコメディの人気があったが、それと並ぶ一大ジャンルがあった。瀬川昌治監督の旅行シリーズ(フランキー堺主演)を代表とする、コメディアンのよさを引き出しつつ、ションベン臭くて適度に猥雑な喜劇映画だ。寅さんシリーズでも、3作目の『男はつらいよ・フーテンの寅』だけは、森崎東監督なのでションベン臭い異色作となっている。

本作は瀬川監督であり、その本領を遺憾なく発揮している。ストリップ劇場のコントの座付き台本作家であった井上ひさし原作ということもあり、社会の底辺で生きるストリップの踊り子さんたちを生き生きと活写しており、笑いのプロフェッショナルたるコメディアンたちも存分にリスペクトして描いている。

主役の愛川欽也さんも上手いが、やはり若き日のタモリさんである。

人分析の最高峰・寺山修司のモノマネは、「寺山だったら言いそうなこと」に発展進化しているし、四か国語麻雀、中洲産業大学教授、北京放送などただただ馬鹿馬鹿しい。

極めつけは、ストリップ劇場に視察に来た浄化運動中の女性国会議員の前で、「君が代」を「月の法善寺横丁」の替え歌で歌うシーン。テレビでは絶対やれない芸だ。

最高に面白い喜劇映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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