岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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見え辛いウクライナの現状を伝える記録映画

2024年06月10日

マリウポリの20日間

©2023 The Associated Press and WGBH Educational Foundation All rights reserved.

【監督】ミスティスラフ・チェルノフ

血を流す人たちのリアルと数で伝えられるだけの犠牲者の格差

2022年2月…今も戦火は続く。

ロシア軍はウクライナ東部にあるマリウポリに侵攻を開始する。

確かに存在する国境を越える行為。その蛮行を戦争と言ってしまえばそれまでだが、そこには正当性などは一切ない。

当事者の言い分は、「そこでナチスと同様のジェノサイドが行われているから」と、まことしやかな理由をあげる。

長い歴史を振り返らなければ、その真実は見えてこないとか、積年の問題を抜きには語れないとか、あれこれ理屈をこねたりするが、これらは全て、外野の意見、御託に過ぎない。

例えば、その直後から世界を駆け巡ったであろう、戦争の始まりを告げるニュース報道は、どれくらいの真実を見せてくれたのか?

『マリウポリの20日間』は、戦争の最前線である現場にとどまった勇気あるジャーナリストたちが、その惨状を記録した映画である。

ロシアの侵攻開始の情報を受け、AP通信のウクライナ人記者ミスティスラフ・チェルノフは、仲間と共に現場に取材に入る。

既にロシア軍の攻撃により、インフラの多くは遮断されてしまった。他の海外メディアは撤退を急ぐが、チェルノフたちはロシア軍に包囲された市内に留まる道を選択する。

話は逸れるが、今、世界ではイスラエルのガザ地区侵攻のニュースが、ロシアとウクライナの戦争よりも優先的に報道されている。ハマスというテロ組織を撲滅するというお題目のもと、イスラエル軍の攻撃作戦が繰り広げられる。そこで言われるのは民間人への被害である。

"民間人" 果たして現場では、この区別は通用するのだろうか? 傍観者が言える綺麗事にしか過ぎないような気がしてならない。

マリウポリは生活の現場であった。美しい街で人々は平和に日常を送っていた。それを破壊する行為に正当性など存在しない。

硬直化した政治家の都合に振り回されるのは、一市民…何度繰り返されるのか。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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