岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

凄惨な惨状を克明に記録したドキュメンタリー

2024年06月10日

マリウポリの20日間

©2023 The Associated Press and WGBH Educational Foundation All rights reserved.

【監督】ミスティスラフ・チェルノフ

すべての戦争は自衛から始まる

2022年2月24日、プーチン大統領が「自衛のための特別軍事作戦」と称するロシア軍によるウクライナへの侵攻が開始され、ウクライナ南東部の港湾都市マリウポリは、その最前線となった。

侵攻前には、市民と、親ロシア派勢力が支配する東部ドンパス地方からの避難民を合わせた約54万人が暮らしていたが、ボイチェンコ市長によれば「死者は確実にわかっているだけで2万2千人。数十万人は国内外に家を追われた」ということである。

一方で10万人の市民がなお現地に残り、新たに10万人ほどがロシア側から「移住」した。市長いわく「ウクライナに関するものを破壊し、民族のアイデンティティーを消し去り、別のものを植え付けようとしている。ソ連時代と同じだ」

本作は、ほとんどのメディアがウクライナから脱出する中、ウクライナ人のAP通信ジャーナリスト、ミスティスラフ・チェルノフ氏をはじめとする取材班が、決死の覚悟で、その凄惨な惨状を克明に記録したドキュメンタリーだ。

ロシア軍による砲撃が炸裂する中、マリウポリ市民やウクライナ人兵士、病院関係者らにカメラを向けインタビューをしていく。

ロシア軍の攻撃は、軍事施設やウクライナ軍だけでなく、一般市民や病院にも容赦なく砲撃をあびせる。混乱を極め、修羅場と化している病院内。次々と運び込まれてくる重傷者は、とても全員には手の施しようがない。

撮影クルーは街へ出ていく。嘆き悲しむ市民もいれば、クルーに毒づく市民もいる。建物は破壊され、がれきの山となっている。死体安置所のスペースが無くなり、大きな溝状の穴を掘って、袋詰めにされた遺体が次々と投げ込まれていく。戦慄を覚えずにはいられない。

戦争となると、女性や子どもを含む非戦闘員が真っ先に犠牲となる様子が、まざまざと見せつけられる。それが現実なのだ。

そして「すべての戦争は自衛から始まる」(森達也著)のである。傑作。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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