岐阜新聞 映画部

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3者入り乱れての心理戦を展開するフィルム・ノワール

2024年05月29日

無名

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【出演】トニー・レオン、ワン・イーボー、ホアン・レイ、森博之、チャン・ジンイー、ジョウ・シュン
【監督】チェン・アル

緊張感のあるストーリーと派手なアクション

本作は1940年代前半の上海を舞台に、中国共産党・国民党・日本軍の3者が入り乱れて究極の心理戦を展開するフィルム・ノワールである。

日本対中国というシンプルな図式だが、ストーリー前夜の歴史的経過を整理すると、1937年7月に日中戦争が勃発(盧溝橋事件)、日本軍は宣戦布告のないまま戦線を拡大し12月首都・南京攻略、そして本作の発端となる1938年10月には広州を占領した。映画では「広州陥落」として触れられている。

蒋介石の国民党政府は1937年12月に首都を重慶に移転していたが、日本軍は1940年3月親日派の汪兆銘を首班とする南京国民党政府を樹立させ中国分断を図った。しかし国際的には認められていない。

舞台となる上海には、共同租界(治外法権の外国人居留地)と呼ばれる列強諸国の租借地があり、そこでは各国の機密情報が飛び交いスパイが暗躍していた。

そんな背景の中の映画であるので歴史的な事実を知らないとチンプンカンプンだと思うが、何はともあれ1940年代を再現した上海の街並みや、スタント無しでの迫力のアクションシーンを楽しむだけでも元はとれるのだ。

中国国内で大ヒットした映画で中国共産党正義であることは確かだが、それはひとまず置いておく。

主演は国際的俳優のトニー・レオンと中国で売り出し中の若手ワン・イーボーで、日本の傀儡・汪兆銘政権の諜報員フー主任とイエ秘書を演じる。これが表の顔とすると、裏の顔はおのずとわかってくる。レオンの沈着冷静な冷徹感ぶりと、イーボーのクールな無表情さは、フィルム・ノワールならでは好演だ。

クライマックスの狭いビルでの激闘はド迫力があるし、日本降伏後の香港での劇的な再会シーンなど、2大スター共演の面白さを満喫できる映画だ。

スパイ映画の多くは緊張感のあるストーリーや派手なアクションが売りではあるが、歴史を知るとより面白い一篇ではある。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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