岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品ミッシング B! 本年度日本映画ベストワン有力の傑作 2024年05月28日 ミッシング ©2024「missing」Film Partners 【出演】石原さとみ、中村倫也、青木崇高、森優作、小野花梨、細川岳、柳憂怜、美保純、ほか 【監督・脚本】𠮷田恵輔 興味本位のテレビ報道と無責任なSNSの弊害 𠮷田恵輔監督の長編映画はすべて見ているがどれも皆面白い。殆どの作品がオリジナル脚本で、ハイアベレージのクオリティーをキープしているのが凄い。 特に近年の「空白」と「神は見返りを求める」は現代社会を反映した傑作。 「空白」は女子中学生の事故死を発端に関係者の人生が狂わされていく群像劇で、無責任なテレビのワイドショーとそれを鵜呑みにした大衆の誹謗中傷が描かれていた。 前作「神は見返りを求める」は現代のSNS社会を巧みに切り取ったユーチューバーを主役にした問題作で、恩を仇で返す人間の身勝手さ、善意を踏みにじられた者の憎悪、悪口を吹聴して対立を煽りながら上手く立ち回ろうとする輩等、人間が持つ醜悪な側面を徹底的にあぶり出した。 そんな𠮷田恵輔の新作「ミッシング」は、自身の最高作「空白」に匹敵する社会派エンタテインメントの傑作で現時点での今年の日本映画ベストワン最有力の必見作。 幼女行方不明事件を題材に、視聴者の興味を引くことを最優先に不確かな疑惑を放送するテレビ報道のあり方や、誹謗中傷の無責任なSNSでの個人攻撃等、現代社会への様々な問題提起がなされている。 今回は𠮷田恵輔作品の特徴であるどす黒いユーモアを封印したリアリズムタッチの作品で、人間社会の闇ばかりではなく確かな光も描いている。 石原さとみが藁にも縋るという表現がぴったりの母親の必死さと不安定な精神状態を見事に演じている。熱演過ぎるという意見もあろうが、母親が普通の心理状態でないことを考えれば違和感はない。感情が駄々洩れ状態の妻に対し、必死で感情を抑えようとしている夫役の青木崇高が素晴らしく、絶妙なコントラストをなしている。 さらに中村倫也が演じるテレビマンの葛藤も心に響き、姪の行方不明に一番責任を感じている一方で疑惑の目で見られている弟役の森優作が助演男優賞クラスの好演。 語り手:井上 章映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。 100% 観たい! (25)検討する (0) 語り手:井上 章映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。 2024年09月26日 / どら平太 日本映画黄金時代を彷彿とさせる盛りだくさんの時代劇 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 助けを求める人はもはや敵ではなく、ただの人間だ 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 海の男たちが下す決断を描くヒューマンドラマ more 2018年04月25日 / あまや座(茨城県) 日本の原風景が残る街で映画を観る贅沢 2022年01月26日 / シネマ・クレール(岡山県) 目の前を路面電車が通過する城下町の映画館 2021年11月24日 / 【思い出の映画館】テアトル石和(山梨県) ぶどう園の真ん中にポツンと佇む映画館。 more
興味本位のテレビ報道と無責任なSNSの弊害
𠮷田恵輔監督の長編映画はすべて見ているがどれも皆面白い。殆どの作品がオリジナル脚本で、ハイアベレージのクオリティーをキープしているのが凄い。
特に近年の「空白」と「神は見返りを求める」は現代社会を反映した傑作。
「空白」は女子中学生の事故死を発端に関係者の人生が狂わされていく群像劇で、無責任なテレビのワイドショーとそれを鵜呑みにした大衆の誹謗中傷が描かれていた。
前作「神は見返りを求める」は現代のSNS社会を巧みに切り取ったユーチューバーを主役にした問題作で、恩を仇で返す人間の身勝手さ、善意を踏みにじられた者の憎悪、悪口を吹聴して対立を煽りながら上手く立ち回ろうとする輩等、人間が持つ醜悪な側面を徹底的にあぶり出した。
そんな𠮷田恵輔の新作「ミッシング」は、自身の最高作「空白」に匹敵する社会派エンタテインメントの傑作で現時点での今年の日本映画ベストワン最有力の必見作。
幼女行方不明事件を題材に、視聴者の興味を引くことを最優先に不確かな疑惑を放送するテレビ報道のあり方や、誹謗中傷の無責任なSNSでの個人攻撃等、現代社会への様々な問題提起がなされている。
今回は𠮷田恵輔作品の特徴であるどす黒いユーモアを封印したリアリズムタッチの作品で、人間社会の闇ばかりではなく確かな光も描いている。
石原さとみが藁にも縋るという表現がぴったりの母親の必死さと不安定な精神状態を見事に演じている。熱演過ぎるという意見もあろうが、母親が普通の心理状態でないことを考えれば違和感はない。感情が駄々洩れ状態の妻に対し、必死で感情を抑えようとしている夫役の青木崇高が素晴らしく、絶妙なコントラストをなしている。
さらに中村倫也が演じるテレビマンの葛藤も心に響き、姪の行方不明に一番責任を感じている一方で疑惑の目で見られている弟役の森優作が助演男優賞クラスの好演。
語り手:井上 章
映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。
語り手:井上 章
映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。