岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

格好良くない芸人を見つめたドキュメンタリー

2024年05月23日

漫才協会 THE MOVIE 〜舞台の上の懲りない面々〜

©「漫才協会 THE MOVIE 〜舞台の上の懲りない⾯々〜」製作委員会

【出演】青空球児・好児、おぼん・こぼん、ロケット団、宮田陽・昇、たにし、U字工事、ねづっち、大空遊平、はまこ・テラこ、錦鯉、ビートきよし、爆笑問題、サンドウィッチマン
【監督】塙宣之

活躍できる場所があることと未来へのアプローチ

そこは、東京浅草フランス座演芸場東洋館。

漫才協会は東京都台東区浅草公園六区にある演芸場 "東洋館" を拠点に活動する芸人のための社団法人である。

第二次大戦前、そこには "三友館" という映画館があった。敗戦後、その三友館の支配人だった松倉宇七は、昭和22(1947)年、浅草2丁目に開館したストリップ劇場 "ロック座" の成功に、遅まきながらの便乗を期待し、昭和26(1951)年にその地にストリップ劇場 "フランス座" を開設した。

命名の由来は、当時、ロック座に通い詰めていた、作家・永井荷風に依頼して、即答を受けたものだというが、それは定かではない。

松倉が演劇青年だったこともあるのか、フランス座は、舞踏を中心にした "上品な" ストリップを基本に、幕間にはコントの出し物を上演するという、独自の路線を売りものにしていた。

映画の中でも、フランス座時代の芸人のひとり、ビートたけしの話が挿入されているが、喜劇人、芸人の伝説はそれだけにとどまらない。

劇作家で直木賞作家として活躍した井上ひさしが、その無名時代に、フランス座の照明係などの雑用をこなし、劇場で上演されるコントの台本を担当し、腕を磨いたという話は有名で、井上はフランス座を "ストリップ界の東京大学" と呼んだ。

昭和34(1959)年には、建物の改築に伴い、新ビルの1階に通常の劇場 "東洋館" が開設された。

『漫才協会 THE MOVIE』は、協会の現・会長を務める漫才コンビ・ナイツの "ボケ担当" 塙宣之が、自らの現場を内側から見つめたドキュメンタリーである。

まず、東京の寄席における "色もの" という位置づけに驚く。いわば肩身の狭い存在であった漫才師や他の色もの芸人が、大袈裟に言えば自己防衛のために組織化し、機能不全を起こしていた活動の復活を試る。その歴史的な説明に真摯な姿勢が伺える。

そこにあるのは決して綺羅星ではないが…。ひとりひとりの芸人に注がれる優しさと熱い魂を同時に感じ取れる映画である。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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