岐阜新聞 映画部

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三島有紀子監督が、自分自身と向き合った自伝的映画

2024年05月17日

一月の声に歓びを刻め

© bouquet garni films

【出演】前田敦子、カルーセル麻紀、哀川翔、坂東龍汰、片岡礼子、宇野祥平、原田龍二、松本妃代、とよた真帆
【脚本・監督】三島有紀子

長い年月をかけてようやく吹っ切れた

本作は、三島有紀子監自身が幼少期に体験した性暴力被害をモチーフに、「性暴力と心の傷」をテーマに描く、自分を突き詰め自分自身と向き合った自伝的映画だ。

映画は三つのパートに分かれ、①北海道・洞爺湖畔に一人で暮らす性適合手術を受けた「おじちゃんだったおばさん」マキ(カルーセル麻紀)、②東京・八丈島で牛飼いをして暮らす妻を交通事故で亡くした誠(哀川翔)、③久しぶりに大阪・堂島に帰って来たれいこ(前田敦子)の物語がオムニバス形式で綴られていく。

①は、次女れいこを47年前に性被害により亡くし、「娘を死に追いやった男性性を憎むあまり性器を切り取った人」の話で、「お父さんは娘を助けてあげたかった」という悔恨のパートだ。性被害は、当事者だけでなくその関係者もひどく傷ついて一生のトラウマとなってしまう。

1973年モロッコで性適合手術を受け、2004年の性同一性障害者特例法施行と共に性別変更(男→女)が認められたタレントのカルーセル麻紀さん(81)の存在感が光っている。

②は、妻の延命治療を中止したことに自問している誠(哀川翔)と、5年ぶりに八丈島に1人で帰ってきた妊娠している娘・海(松本妃代)との間の、揺れる心の動きを追った哀切の章だ。娘を尊重してやりたい気持ちと、相談してくれなかった戸惑いが、心に染みてくる。

③は、三島監督の体験そのものだ。堂島に帰ってきたれいこ(前田敦子)は、「レンタル彼氏」を生業とする行きずりの青年(坂東龍汰)とセックスをする。そして幼い頃に受けた性暴力の現場を訪れる。そこでわかったのは「なんで私が罪を感じなきゃいけないんだよ、やられたの私じゃん」という感覚だ。彼女は長い年月をかけてようやく吹っ切れたのだ。

3人の主人公は決して交わることはないが、みんな心に深い傷を受けていることは同じだ。そして正面から向き合う。悲しみの中に畏敬の念を抱く映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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