岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

自らの体験を反映させた三島有紀子監督の渾身作

2024年05月17日

一月の声に歓びを刻め

© bouquet garni films

【出演】前田敦子、カルーセル麻紀、哀川翔、坂東龍汰、片岡礼子、宇野祥平、原田龍二、松本妃代、とよた真帆
【脚本・監督】三島有紀子

3つの島を舞台にそれぞれの声が繋がる時

北海道洞爺湖の中島。

正月、ひとり暮らしのマキ(カルーセル麻紀)の家に、久しぶりに家族が集う。マキの手作りのおせち料理を囲み、楽しい空気に包まれた時間だが…マキには、次女(れいこ)を亡くしたという哀しい過去があり、その喪失感と現在も闘っている。

伊豆諸島の八丈島。

牛飼いをして暮らす誠のもとに、ひとり娘の海が5年ぶりに帰って来る。妻を交通事故で亡くし男でひとりで娘を育てたが…海は身重の体で結婚したことすら知らなかった。

大阪北新地の堂島。

元恋人の葬儀に参列するため、故郷の堂島を訪れたれいこ(前田敦子)は、トト・モレッティと名乗る不思議な男に声を掛けられる。れいこは自らの過去、今も続くトラウマと決別するため、レンタル彼氏をしているという男と、一夜をともにすることになる。

『一月の声に歓びを刻め』は、三島有紀子監督のオリジナル脚本で、自身が47年間にわたり向き合ってきた過去の出来事をモチーフにして編まれた物語である。

1話と3話に登場する同じ名前=れいこ、という女性の体験した過去が共通すること。それぞれの選択に違いを持たせ、過酷な出来事を強調する。そこに監督の体験を反映させていることが厳しくも悲痛感を滲ませる。

こういう映画づくりは稀有なケースだと思うが、物語を3つに分けた工夫をひとつの緩衝ととらえたい。故にその痛みを軽々に語ることは憚れる。

ただ、1本の映画としてみた時の判断=評価は異なる。3つのエピソードの関連性、特に孤立している2話を交えて、些かそれが希薄になるのは、パート分けの意味を曖昧にする。

1話でマキを演じたカルーセル麻紀の、これもまた、自らを投影させた鬼気。3話で、れいこを演じた前田敦子の痛みと、新たな明日を見つめる成長の清々しさ。脇役陣の好演が素晴らしいのに、個で際立っても、特異に見えてしまう瞬間があるのは些か勿体無い。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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