岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

現実を直視した、大変珍しいニカラグア映画

2024年05月17日

マリア 怒りの娘

© Felipa S.A. - Mart Films S.A. de C.V. - Halal Scripted B.V. - Heimatfilm GmbH + CO KG - Promenades Films SARL - Dag Hoel Filmprooduksjon as - Cardon Pictures LLC - Nephilim Producciones S.L. ‒ 2022

【出演】アラ・アレハンドラ・メダル、バージニア・セビリア、カルロス・グティエレス、ノエ・エルナンデス、ダイアナ・セダノ
【監督】ローラ・バウマイスター

マリアは逞しい。理不尽な現実に立ち向かう気概がある。

これまでに国内で製作された映画はわずか数本というニカラグアであるが、1979年には労働者・農民・学生などに支持されたサンディニスタ民族解放戦線(FSLN)が43年続いたソモサ独裁政権を打倒、ニカラグアに革命政権を樹立したことで知られる。

アメリカの直接的な干渉を受けながらも、非同盟主義・混合経済・複数政党制・少数民族自治などの政策で国民の支持を集めてきたが、現在ではFSLN出身のオルテガ大統領が独裁色を強め民主化とはほど遠い状態で、中米の最貧国のひとつであることに変わりはない。

映画の舞台は、首都マナグアにある景勝地マナグア湖に隣接する広大なゴミ集積所ラ・チュレカだ。そこに積みあがったゴミの山の中から、ガラスやプラスチック、金属スクラップなどのリサイクル物資を漁り換金して暮らす11歳のマリア(アラ・アレハンドラ・メダル)とシングルマザーのリリベス(バージニア・セビリア)が主役である。

社会の底辺で生きる親娘の前に立ちはだかる現実は厳しい。政府によるゴミ収集の民営化は、ゴミ捨て場の住民たちの生活に直撃する。それに反対するデモや抗議活動が報道される。

ローラ・バウマイスター監督によると、この部分はフィクションで2018年の社会保障改革抗議デモをモデルにしているということ。ニカラグアではデモや抗議活動は頻繁に行われているらしい。

母リリベスは、この生活から脱したくて、街のマフィア的な組織と取引をしている。それにより娘を人に預けて組織側に斡旋された仕事に行ってしまう。貧困と犯罪組織との問題は悩ましい。

映画はドキュメンタリーかと思うほどリアリティがあり、児童虐待、育児放棄、労働者搾取、環境破壊など、ニカラグア抱えている社会問題が次々と浮き彫りになってくる。

しかしマリアは逞しい。理不尽な現実に立ち向かう気概がある。映画は現実を捉えつつマリアにエールを送っているのだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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