岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

女子高生が体験する事で知る戦争の真実

2024年05月10日

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。

©2023「あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。」製作委員会

【出演】伊藤健太郎、嶋崎斗亜、上川周作、小野塚勇人、出口夏希、坪倉由幸、津田寛治、天寿光希、中嶋朋子/松坂慶子
【監督】成田洋一

"無駄死"に" という言葉にある痛みと棘

日本人は歴史認識に疎いと、周辺は騒ぎ立てる…

原作は汐見夏衛の同名のベストセラー小説。はじめはSNS(=小説投稿サイト)で発表され、題名は「可視光の夏ー特攻隊と過ごした日々ー」だった。2016年には、文庫本として出版され、TikTokで話題を集めることになり、文庫、ジュニア文庫、単行本と広がり、累計100万部を超えるヒット作となった。2021年には、マツセダイチの作画で漫画化もされた。

実写として映画化された『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』は、昨年の12月8日に公開され、現在も公開が継続する大ヒットとなった。 女子高生の百合は不機嫌だった。学校生活も順風には程遠く、その日は、進路をめぐって母親と口論になってしまう。勢い、家を飛び出すことになって帰宅もできないまま、遂には、近所にある防空壕跡で一夜を過ごすことになってしまう。

翌朝、壕から外に出た百合の目の前に広がるのは、見慣れたそれとは違う景色だった。

時間空間を超える際の派手な演出はないが、百合が見る世界が、1945=昭和20年6月と認識することで "タイムスリップもの" だとわかる。

戸惑い様子のおかしい百合は、通りがかりの青年彰に救われる。

タイムスリップものと言えばファンタジーで、コメディ色のある軽快なものが少なくない。

しかし、本作で描かれる舞台は戦いの最中。敗戦濃厚な世間には、悲惨極まりない現状が広がる。

我々、昭和の世代は、防空壕跡を実際に目にしている。小山の側の寺の敷地にあった洞穴がそれで、今なら安全管理ができていないと、立入禁止だろうが、当時は子どもの遊び場になっていた。

百合は絶滅危惧の防空壕跡から戦下に立った。

今を生きる高校生の多く(?)は、防空壕の役割を知らないだろう。ましてや特攻隊がはたした役割を理解できない。

薄い、あるいは欠落した歴史の事実を知る機会に映画が一役かったこと、小さな入口になったことは有意義だが、その前に世界で起きている生の戦争があったことで、少し複雑な思いに駆られる。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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