岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

サスペンス劇をまとった社会派ドラマ

2024年04月22日

ビニールハウス

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【出演】キム・ソヒョン、ヤン・ジェソン、シン・ヨンスク、ウォン・ミウォン、アン・ソヨ
【監督・脚本・編集】イ・ソルヒ

華やかなKポップの裏側にある社会の暗部

"半地下はまだマシ" ?ー韓国社会にある貧困問題を象徴する住宅事情。

ムジョンの住まいは農地の中にポツンと建つビニールハウス。内部は最低限の居住空間と設備は確保されてはいるが…。

ムジョンにはひとり息子がいる。理由かはわからないが、少年院らしき施設に収監されている息子の面会に行く。ぎこちない会話はかみ合わない。

ムジョンには母がいる。病院にいる母を見舞うが、娘の献身を感謝するでもなく、母娘の関係は冷え切っているように見える。

ムジョンは訪問介護士として働いている。その家の主は盲目の老人テガン。重い認知症の妻ファオクの世話を任されている。

老いた夫婦のままならない日常を補佐する仕事。盲目の夫はムジョンを労ってくれるが、認知症の妻からは敵対視され、献身的な介護は理解されるはずもなく、八つ当たりは暴力的だったりする。

ムジョンは早くビニールハウスから脱出したい。息子と暮らせる住居を探し、それを夢見ている。

ある日、入浴介護をしている時、暴れはじめたファオクを揉み合ったはずみの事故で死なせてしまう。

追い詰められたムジョンは隠蔽の道を選ぶ。

韓国では日本と同じく、少子化の問題が深刻化している。これは同時に高齢化と人口減少の社会問題と連結する。

激しい受験戦争は、格差社会の入口、一流大学に入学して、一流企業に就職するという、富裕層への道を希求するからに他ならない。

日本も似たようなものだと思うが、韓国のそれはさらに過酷で極端にも見える。

半地下の人々を描いた『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督/2019年)の主題は貧富格差だった。一度堕ちたら這い上がることが困難な社会の構造は深刻だという。

サスペンス劇として綱渡りの展開は上手いが、華やかなKポップからは想像できない、裏側を抉り取って見せる社会派の要素が、暗く重くやるせない。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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