岐阜新聞 映画部

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娼婦から公妾にまで昇りつめたシンデレラ物語

2024年04月11日

ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人

©️2023-WHY NOT PRODUCTIONS-FRANCE 2 CINEMA- FRANCE 3 CINEMA-LA PETITE REINE-IMPALA PRODUCTIONS ©︎Laurent Dailland ©︎Stéphanie Branchu - Why Not Productions

【出演】マイウェン 、ジョニー・デップ
【監督】マイウェン

宮廷の様々なルールは、笑わずにはいられない

フランス国王ルイ15世(在位1715~1774)は、絶世の美男を武器に王妃以外にも多くの公妾をほしいままに迎え入れ、"最愛王"と呼ばれていた。

鑑賞後に勉強した処によると、当時は政治的な思惑で結婚せざるを得なかった王妃(正妻)よりも、自分が気に入って選んだ公妾(愛人)の方が、発言権が大きかったこともあったらしい。公式な立場であり、社交界の花形で、内政や人事まで国王を補佐する立場の公妾もいたという事だ。

ルイ15世の公妾では、ロココ美術の庇護者で宿敵オーストリアとの同盟実現に尽力したポンパドゥール夫人(1721~1764)が有名だが、最期の公妾だったのが本作の主人公ジャンヌ・デュ・バリー夫人(1743~1793)である。

ポンパドゥール夫人が平民ではあるがブルジョワ階級出身であったのに対して、ジャンヌ・デュ・バリー夫人はお針子や娼婦など貧しい階層から公妾にまで昇りつめたシンデレラであった。

奔放でパワフルなジャンヌ・デュ・バリーを演ずるのは、監督と脚本も務めるマイウェン。正直いってルイ15世にひとめ惚れされるほどの美人?と思ってしまうのは個人的主観にすぎないが、シャネル全面協力のコスチュームは素晴らしい。

ルイ15世役のジョニー・デップは全編フランス語で挑んでいるが、威厳と貫禄に加えて色気があり、こちらのキャスティングは申し分ない。

面白いのは、宮廷の様々なルールだ。王に背を向けてはならないためにカタカタ靴をならしながらの後退りは馬鹿馬鹿しいにもほどがあるし、床入り前の入念な下半身チェックは真剣になればなるほど滑稽だ。目覚めたばかりの王に対する侍医たちの健康チェックや、王の親族たちによる列をなしてのご挨拶など、笑わずにはいられない。

ジャンヌに対する宮廷人たちの嘲笑と蔑み。しかしそんな仕打ちは歯牙にもかけず、たくましく生き抜くジャンヌ。共感せずにはいられない。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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