岐阜新聞 映画部

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現代にリンクする、ノスタルジックで心温まる物語

2024年04月04日

燈火(ネオン)は消えず

©2022 A Light Never Goes Out Limited All Rights Reserved

【出演】シルヴィア・チャン、サイモン・ヤム、セシリア・チョイ、ヘニック・チャウ
【監督・脚本】アナスタシア・ツァン

ネオンは香港人のバイタリティーと希望の象徴だ

ネオンサインの魅力は、魅せる光であることだ。点ではなく線で光る特性から全方向に光が広がり、そのため独特のボケ感が生まれノスタルジックな雰囲気を演出する。美しい曲線美やシャープな輪郭は機械ではできないため、職人によるハンドメイドで作られる。

東海地方では岐阜・西柳ヶ瀬のネオン街が有名で、道幅の広いアーケードの下に様々な色のネオン菅が街を彩る光景は圧巻だ。ただ全国的には照明の主流がLEDへと変わり、ネオンサインは姿を消しつつある。昭和ノスタルジーであるとは思うが、寂しさもある。

『燈火は消えず』は、香港の夜景の象徴であった燈火(ネオン)が消えゆくいま、それを作っていたネオン職人の技術と魂を伝える映画であると共に、亡き夫の意志を引き継ごうと必死に奮闘する妻メイヒョン(シルヴィア・チャン)と弟子の青年レオ(ヘニック・チャウ)を主軸にした、香港人の心意気が詰まったノスタルジックで心温まる物語である。

映画の中の登場人物たちは、中国当局の影響下による不安と何かしらの孤独を抱えているようだ。民主化デモの弾圧は直接的だが、ネオンサインが最盛期の1割に激減したのは、時代の趨勢とはいえ、古きよき香港の否定と捉えてしまっても仕方がない。

映画のロケ地やテレビの特集でしか知らないが、香港のネオンサインは色調も明るく自己主張も強く、当初は撤去に香港人は無関心であったようだが、次第に有名看板を中心に撤去反対の声があがっていったらしい。傍からみれば、ネオンは香港人のバイタリティーと希望の象徴のイメージが強い。

最愛の夫を失ったメイヒョンの喪失感とネオンサインの喪失感は、映画のテーマとしてリンクしてくる。そもそも亡くなった夫の、今は使われてないネオンサイン工房に潜伏していたレオは、絶望から自殺を図る予定であったところを、偶然メイヒョンに救われたのだ。

現代にリンクするノスタルジー映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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