岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品瞳をとじて B! 時と記憶をたどる哀しくとも美しい物語 2024年03月26日 瞳をとじて © 2023 La Mirada del Adiós A.I.E, Tandem Films S.L., Nautilus Films S.L., Pecado Films S.L., Pampa Films S.A. 【出演】マノロ・ソロ、ホセ・コロナド、アナ・トレント 【監督・脚本】ビクトル・エリセ 交錯する映画と現実に散りばめられたエリセ監督自身の思い ビクトル・エリセ監督、31年ぶりの新作映画。 ビクトル・エリセ監督は1940年、スペイン、バスク地方のカランサという町で生まれた。 幼い頃は、アメリカ映画が好きな少年で、ジョン・フォードやハワード・ホークス監督作品をお気に入りの俳優優先で選んで観ていた。 マドリード大学では、政治学や法律を専攻したが、1960年にスペイン国立映画学校へ転入した。在学中は、芸術論や思想、評論を学び、63年には監督資格を得た。監督デビューは、69年のオムニバス作品『挑戦』で、その最終章を担当した。 長編第1作は、1973年に発表した『ミツバチのささやき』。スペイン内戦終結後の40年代を舞台に、生まれ故郷でもあるバスクを含むカスティーリア地方の農村の人々の心情を描いている。視点はイザベルとアナの幼い姉妹で、映画中映画としてアメリカ映画『フランケンシュタイン』が物語に重要な役割を担う。このデビュー作はサン・セバスチャン映画祭(先に公開されたウディ・アレン監督作品の舞台)でグランプリに輝いた。 何故か日本での紹介は遅れ、公開されたのは1985年のことだった。この年には第2作『エル・スール』(1983年)も公開されているから、この年はビクトル・エリセ監督を知る記念すべき年となった。 冒頭は劇中映画…イスラム風の装飾の荘厳な雰囲気の屋敷の主からひとりの男が、行方不明の娘探しを依頼される…中断した映画。 それから22年。製作中断の原因となった主演俳優の行方不明の真相を探るテレビ番組が企画される。監督であったミゲルは、親友でもあった俳優フリオの突然の失踪に向き合う事になる。 映画はミゲルの日常をゆったりと描く。そのリズムを破るのが過去の記憶で、そこに見えてくるのは失われた時間である。ミゲルにエリセ監督自身が投射されていることは明白で、随所に見えるのは創作の格闘の跡である。美しい映画はあまりにも切ないが、新たな一歩が見える。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (6)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2024年09月26日 / どら平太 日本映画黄金時代を彷彿とさせる盛りだくさんの時代劇 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 助けを求める人はもはや敵ではなく、ただの人間だ 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 海の男たちが下す決断を描くヒューマンドラマ more 2022年09月28日 / 宝塚シネピピア(兵庫県) かつて東洋一の撮影所があった街に復活した映画館。 2018年10月03日 / シネモンド(石川県) 加賀百万石の城下町から次世代の映像作家を 2024年09月05日 / 京都シネマ(京都府) 過去と現在の重なりを感じる映画館でゆったりと。 more
交錯する映画と現実に散りばめられたエリセ監督自身の思い
ビクトル・エリセ監督、31年ぶりの新作映画。
ビクトル・エリセ監督は1940年、スペイン、バスク地方のカランサという町で生まれた。
幼い頃は、アメリカ映画が好きな少年で、ジョン・フォードやハワード・ホークス監督作品をお気に入りの俳優優先で選んで観ていた。
マドリード大学では、政治学や法律を専攻したが、1960年にスペイン国立映画学校へ転入した。在学中は、芸術論や思想、評論を学び、63年には監督資格を得た。監督デビューは、69年のオムニバス作品『挑戦』で、その最終章を担当した。
長編第1作は、1973年に発表した『ミツバチのささやき』。スペイン内戦終結後の40年代を舞台に、生まれ故郷でもあるバスクを含むカスティーリア地方の農村の人々の心情を描いている。視点はイザベルとアナの幼い姉妹で、映画中映画としてアメリカ映画『フランケンシュタイン』が物語に重要な役割を担う。このデビュー作はサン・セバスチャン映画祭(先に公開されたウディ・アレン監督作品の舞台)でグランプリに輝いた。
何故か日本での紹介は遅れ、公開されたのは1985年のことだった。この年には第2作『エル・スール』(1983年)も公開されているから、この年はビクトル・エリセ監督を知る記念すべき年となった。
冒頭は劇中映画…イスラム風の装飾の荘厳な雰囲気の屋敷の主からひとりの男が、行方不明の娘探しを依頼される…中断した映画。
それから22年。製作中断の原因となった主演俳優の行方不明の真相を探るテレビ番組が企画される。監督であったミゲルは、親友でもあった俳優フリオの突然の失踪に向き合う事になる。
映画はミゲルの日常をゆったりと描く。そのリズムを破るのが過去の記憶で、そこに見えてくるのは失われた時間である。ミゲルにエリセ監督自身が投射されていることは明白で、随所に見えるのは創作の格闘の跡である。美しい映画はあまりにも切ないが、新たな一歩が見える。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。