岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品瞳をとじて B! 質感もまなざしも衰えてない、キャリアハイの傑作 2024年03月26日 瞳をとじて © 2023 La Mirada del Adiós A.I.E, Tandem Films S.L., Nautilus Films S.L., Pecado Films S.L., Pampa Films S.A. 【出演】マノロ・ソロ、ホセ・コロナド、アナ・トレント 【監督・脚本】ビクトル・エリセ 偉大なる先人の映画をリスペクト スペインの名匠ビクトル・エリセ監督(83歳)は、フランコ政権下の1973年、カスティーリャ地方の小さな村を舞台に6歳の少女アナと彼女の家族の日常を描く『ミツバチのささやき』で長編デビューした。日本ではミニシアター黎明期の1985年に公開され大ヒット。キネ旬4位にランクインした。 1作目の10年後1983年に、内戦の傷を負う父と娘の関係を描く『エル・スール』を発表。製作上の理由で3時間の予定が95分に短縮されるという不本意な公開であったが、日本では1作目と同じ1985年に公開された(キネ旬14位)。 3作目は9年後の1992年公開で、画家アントニオ・ロペスに迫ったドキュメンタリー映画『マルメロの陽光』(キネ旬5位)だ。その後短編はあったものの、長い間長編は撮れないでいた。 『瞳をとじて』は31年ぶりの長編4本目であり、劇映画としては40年ぶりという寡作である。 描かれる内容は、長い間映画が撮れないでいる元映画監督のミゲル(マノロ・ソロ)が、22年前に撮影中であった映画「別れのまなざし」の主演俳優フリオ・アレナス失踪事件の謎を探るというもの。ビクトル・エリセ自身の長い沈黙に思いをはせずにはいられない、キャリアハイの傑作として見事に世に放たれた。 これまでの人生や自身の過去作を振り返りつつ、偉大なる先人の映画をリスペクトし引用する。例えば劇中でミゲルが印象的に歌う「ライフルと愛馬」は、『リオ・ブラボー』(1959)中の名曲で、アル中のディーン・マーティンと早撃ちのリッキー・ネルソンがデュエットするシーンで有名。マーティンが酒を断ち、立ち直っていく姿に自身を重ね合わせているかのようだ。 『ミツバチのささやき』で主演の少女アナ・トレントが、50年ぶりに再びアナ役を演じているのも感慨深い。 質感もまなざしも衰えておらず説明的でもない、まさにビクトル・エリセの映画である。 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 100% 観たい! (7)検討する (0) 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 2024年09月26日 / どら平太 日本映画黄金時代を彷彿とさせる盛りだくさんの時代劇 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 助けを求める人はもはや敵ではなく、ただの人間だ 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 海の男たちが下す決断を描くヒューマンドラマ more 2024年04月24日 / 川崎市アートセンター(神奈川県) 駅を降りると映像と音楽が溢れる街が広がる。 2018年01月11日 / リナシアター(鹿児島県) 大隅半島にただひとつ…皆の思いで復活した映画館 2021年10月27日 / 【思い出の映画館】西尾劇場(愛知県) 愛知県郊外の映画館でギュウギュウ詰めで映画を楽しむ。 more
偉大なる先人の映画をリスペクト
スペインの名匠ビクトル・エリセ監督(83歳)は、フランコ政権下の1973年、カスティーリャ地方の小さな村を舞台に6歳の少女アナと彼女の家族の日常を描く『ミツバチのささやき』で長編デビューした。日本ではミニシアター黎明期の1985年に公開され大ヒット。キネ旬4位にランクインした。
1作目の10年後1983年に、内戦の傷を負う父と娘の関係を描く『エル・スール』を発表。製作上の理由で3時間の予定が95分に短縮されるという不本意な公開であったが、日本では1作目と同じ1985年に公開された(キネ旬14位)。
3作目は9年後の1992年公開で、画家アントニオ・ロペスに迫ったドキュメンタリー映画『マルメロの陽光』(キネ旬5位)だ。その後短編はあったものの、長い間長編は撮れないでいた。
『瞳をとじて』は31年ぶりの長編4本目であり、劇映画としては40年ぶりという寡作である。
描かれる内容は、長い間映画が撮れないでいる元映画監督のミゲル(マノロ・ソロ)が、22年前に撮影中であった映画「別れのまなざし」の主演俳優フリオ・アレナス失踪事件の謎を探るというもの。ビクトル・エリセ自身の長い沈黙に思いをはせずにはいられない、キャリアハイの傑作として見事に世に放たれた。
これまでの人生や自身の過去作を振り返りつつ、偉大なる先人の映画をリスペクトし引用する。例えば劇中でミゲルが印象的に歌う「ライフルと愛馬」は、『リオ・ブラボー』(1959)中の名曲で、アル中のディーン・マーティンと早撃ちのリッキー・ネルソンがデュエットするシーンで有名。マーティンが酒を断ち、立ち直っていく姿に自身を重ね合わせているかのようだ。
『ミツバチのささやき』で主演の少女アナ・トレントが、50年ぶりに再びアナ役を演じているのも感慨深い。
質感もまなざしも衰えておらず説明的でもない、まさにビクトル・エリセの映画である。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。