岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

修士論文の実体験ルポから生まれたラブストーリー

2024年03月18日

フィリピンパブ嬢の社会学

© 2023「フィリピンパブ嬢の社会学」製作委員会

【出演】前田航基、一宮レイゼル、ステファニー・アリアン、田中美里(友情出演)、津田寛治、宮本忠博、五十嵐美紀、岸本華和、イマニ・スタンフォード、鈴江あずさ、藤原基樹、飯島珠奈、仁科貴、浦浜アリサ、近藤芳正、勝野洋
【監督】白羽弥仁

偽装とか不法を日本社会の建前で考えてみよう

2011年頃の話。在日フィリピン人は15万人から20万人いると推定されていた。

何故、この数が推定なのかといえば、そこには所謂、不法就労者が含まれていたからである。当時の日本への出稼ぎ労働者は、9割が女性で、その大部分が、歌手、ダンサーを職種としたエンターテイナーとして、合法的に日本国ビザを獲得した合法就労者だった。

ところが、その実態は違っていて、来日したフィリピン女性の多くの就労先は、水商売の接客業=ホステスが主流だった。

フィリピン人の出稼ぎ労働者は80年代には本格化したが、その頃から同時に日本人男性とフィリピン人女性の結婚が増加した。これには過疎化問題に直面していた地方自治体が進めた農村花嫁の公募が先行したからだが、90年代には7000組にも達した言われるその内容は、農村花嫁型からの多様化が進んだ。

日本人男性と外国人女性の結婚のうち、フィリピン女性との結婚は3割前後を占め、2010年には総数10万組に達した。

そこで問題化したのが、不法就労者への賃金不払い、遅滞、ピンハネなどの搾取と、強制的な同伴出勤、デートなどで生じたセクハラなど、勿論、ケースバイケースなのだが、妊娠により結果としては望まれることなく誕生してしまった "ジャパニーズ・フィリピーノ・チルドレン" の存在が、人権問題として取り上げられるに至った。そして、ビザ取得のための偽装結婚。就労ビザ取得の規制強化は進んだ。

『フィリピンパブ嬢の社会学』の原作は、中島弘象氏の大学院の修士論文を基にして出版されたルポルタージュである。映画も実体験、事実に則しており、出稼ぎフィリピン女性の変わりゆく時代背景が所々で語られている。

舞台である愛知県春日井市の全面撮影協力のご当地映画。その枠を見事にはみ出し、かつてのフィリピンパブのイメージを振り払い、ありがちな辛苦をさらりとかわし、健気で逞しく清々しいラブストーリーに仕上がっている。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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