岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

美学を継承した新たな東京物語

2024年03月13日

PERFECT DAYS

ⓒ 2023 MASTER MIND Ltd.

【出演】役所広司、柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和
【監督】ヴィム・ヴェンダース

公共トイレが聖地巡りになる日がやって来た

舞台は東京、そこに生きる男の名は "平山" 。

東京・渋谷。男はそこにある公共トイレの清掃員をしている。その仕事にはマニュアルがあるのかもしれないが、男には独自のルーティンがあり、その動作はまるで所作のようにさえ見える。決して厳格なではなく、細やかに定められたルール。

今年、2024年の元旦に発生した能登半島地震の記憶は今も新しい。災害が発生し避難所が立ち上がった時、いちばん問題となるのはトイレのこと、というのもニュースなどでしきりに言われる情報で、その重要性も認識できるようになってはいる。

昔、公衆トイレは "広臭トイレ" だった。見た目の不衛生さももちろん、臭いは如何ともし難いもの、という諦めのようなものまで存在した。

ところが、最近は施設などの建物をはじめとして、駅などの公衆トイレは劇的とまで形容できる変貌を遂げてはいまいか?

そこにはハード面での改革があったことも確かだが、清潔な良い環境の維持にはソフト、人の力なくしてあり得ない。

"THE TOKYO TOILET" は、暗い、汚い、臭いという公共トイレのイメージを打ち破り、誰でも快適に使用できる公共トイレ、ちょっと大袈裟に言い換えれば、多様性を受入れる社会の目的として、東京のトイレを新しく生まれ変わらせるプロジェクトとして、日本財団が立ち上げた。世界的な建築家やクリエーターが参加した渋谷区内17ヵ所トイレ改修は、2020年頃から着手され昨年完成した。

このプロジェクトに賛同したのが、本作の監督ヴィム・ヴェンダースで、渋谷の公共トイレを舞台にした映画、新たな東京物語が完成した。

平山は無口で必要最小限の言葉しか口にしないが、これはかつての日本人の男の美学なんていう類のものでもないし、言わんや世捨人でもない。地味な日常がこんなにも美しい輝きを放つ。ありきたりな繰り返しの日常ではなく、その中にある新しさに気づく歓びを教えてくれる。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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