岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ミニマムな生活、「侘び寂び」の美意識、諦観の境地

2024年03月13日

PERFECT DAYS

ⓒ 2023 MASTER MIND Ltd.

【出演】役所広司、柄本時生、中野有紗、アオイヤマダ、麻生祐未、石川さゆり、田中泯、三浦友和
【監督】ヴィム・ヴェンダース

アカデミー賞受賞はならず、残念

本作は、2023年の第76回カンヌ国際映画祭において主演の役所広司さんが男優賞に選出され、脚本賞の『怪物』坂元裕二さんと共に日本映画界を大いに沸かせた。

キネ旬ベストテンでは、1位『せかいのおきく』に続き4点差で惜しくも2位となったが、1位に選出した選者は11人とダントツで、『せかいのおきく』の5人を大きく上回った。

アカデミー賞では国際長編映画賞にノミネートされていたものの、『関心領域』にもっていかれ涙を呑んだが、その圧倒的評価はまさに世界的である。

本作の主人公・平山(役所広司)の日常のルーティーンは、実に美しく洗練されている。必要最低限なものしか置いてないミニマムな部屋の中、決まった時間に起き、決まった手順で布団をたたみ、同じ缶飲料を飲んで出勤する。

私などは、古着屋で買った服に囲まれ、寝る直前までipadを見ていているので目覚めはすっきりせず、認知症の始まりかと思うほど忘れものが多いという、平山さんとは似ても似つかぬ毎日を送っている。

ドイツの巨匠ヴィム・ヴェンダース監督から見た日本の姿は、つつましく、質素なものにこそ趣があると感じる心、「侘び寂び」の美意識である。裏金問題をはじめとする特権意識や差別の構造がある最近の日本人の姿からすれば気恥ずかしい限りだが、『PERFECT DAYS』は、日本人の良さを再認識させてくれる。

渋谷のトイレもいい。そこを清掃する平山の、寡黙だが決して手を抜かないプロフェッショナルの姿もいい。かつて日本にあたりまえのようにいた、頑固でこだわりの強い職人を彷彿とさせる。

街中の風景もいい。「いつものやつ」で通じる浅草の一杯飲み屋。裸の付き合いの銭湯。街中にある神社。馴染みのママがいるスナック。

ストレスのない生活を送るのは難しいが、平山さんのような諦観(悟りの境地にあって物事をみること)の境地に一度はなってみたいものだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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