岐阜新聞 映画部

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自由を追い求め続けた女性・伊藤野枝の生涯

2024年03月12日

風よ あらしよ 劇場版

©風よ あらしよ 2024 ©村山由佳/集英社

【出演】吉高由里子、永山瑛太、松下奈緒、美波、玉置玲央、山田真歩、朝加真由美、山下容莉枝、渡辺哲、栗田桃子、高畑こと美、金井勇太、芹澤興人、前原滉、池津祥子、音尾琢真、石橋蓮司、稲垣吾郎

100年たった今でも続くヘイトクライム

つい先日の3月8日は「国際女性デー」だった。1904年3月8日にアメリカの女性労働者が婦人参政権を求めてデモを起こしたことが起源で、1975年に国連で制定された。日本の状況はと言えば、ジェンダーギャップ指数が146か国中125位(2023年)と大変低く、世界の流れについていけない深刻な状況となっている。

19世紀末から20世紀初頭にかけてフランスから始まった女性の権利獲得運動(フェミニズム)は明治末期から日本でも芽生えてきて、平塚らいてう(1886~1971)(演:松下奈緒)や市川房枝(1893~1981)などが婦人解放運動を率い、戦後の婦人運動や、1970年代のウーマンリブ、現代の#MeToo運動にまで繋がっている。

本作の主人公・伊藤野枝(1895~1923)(演:吉高由里子)は、平塚や市川らと並ぶ初期の婦人解放運動家であると共に、イエ制度を批判し、「自由恋愛」を標榜し、自由を追い求め続けた女性でもあった。

最初の夫・辻潤(1884~1944)(演:稲垣吾郎)は、ダダイスム(虚無思想を背景に、既成秩序の否定や破壊)の中心的人物だ。映画では、野枝と辻の出会いと別れが丁寧に描かれていく。野枝の文才を見出し知識を与えはするが、のちに放浪生活の果て孤独死する辻とは考え方の相違が出て当然だ。

そして無政府主義者の大杉栄(1885~1923)(演:永山瑛太)と出会う。この無政府主義(アナーキズム)だが、「政府を無くして社会に混乱をもたらすテロリスト」と思われがちだが、そうではなく「支配も強制もない状態、自由への解放」なのである。大杉たちが政府を転覆しようなどとは微塵も思っていないのだ。

関東大震災の混乱に乗じて、社会主義者や無政府主義者が官憲や軍人によって殺された。大杉や野枝、橘宗一少年が虐殺された「甘粕事件」。憎悪を煽るヘイトクライムは100年たった今でも続いている。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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