岐阜新聞 映画部

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現代の天才「ハガキ職人」ツチヤタカユキは唯一無二の存在だ

2024年03月05日

笑いのカイブツ

©︎2023「笑いのカイブツ」製作委員会

【出演】岡山天音、片岡礼子、松本穂香、前原滉、板橋駿谷、淡梨、前田旺志郎、管勇毅、松角洋平、菅田将暉、仲野太賀
【監督】滝本憲吾

シュールなお笑いをストイックに追及する

一般視聴者による「投稿参加型」のラジオバラエティは、戦後すぐに始まったNHKの「話の泉」(1946~1964)と「日曜娯楽版」(1947~1952)を契機とするが、一般リスナーの投稿によるコント方式は、ニッポン放送系の「欽ちゃんのドンといってみよう!」(1972~1979)が最初であり、画期的な番組制作手法であった。

略称「欽ドン」は後のラジオバラエティーに大きな影響を与え、お笑いネタの常連投稿者は後にプロになった人も多い。当時高校生の私も夢中になって聴いていたクチだ。

『笑いのカイブツ』の主役であるツチヤタカユキさん(35歳)(岡山天音)は、現代の天才「ハガキ職人」である。

コミュニケーションが苦手で、どちらかというとシュールなお笑いをストイックに追及する彼の姿は、正直に言えば痛々しくもあり、面倒くさくもある。

彼が命をかけるお笑いの世界は、「ただ面白ければいい」わけではなく、ディレクターや先輩作家、芸人などと上手いこと付き合う「コミュニケーション力」がモノをいってくる。彼が一番苦手とする部分だ。

そこに手を差し伸べる東京の芸人が現れた。ベーコンズの西寺(仲野太賀)だ。映画を観ている時は知らなかったが、あとで調べたらオードリーの若林さんとのこと。「オードリーのオールナイトニッポン」(2009~)の常連投稿者であったツチヤさんを東京に引っ張ってきたのだ。

「人見知り芸人」だった若林さんには、コミュ障のツチヤさんが可愛いかったに違いない。映画を観ていると、「この不器用な男の実力を世に認めさせたい」という優しさが十分に伝わってくる。

オードリーの漫才は「ズレ漫才」と呼ばれている。この手法でトップ漫才師になったが、ツチヤさんも世間の「常識」とはズレている。しかし映画からは唯一無二の存在で、無くてはならない作家であると伝わってくる。ツチヤさんには迷惑かもしれないが。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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