岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

人それぞれの欲望の正誤の見え方

2024年03月04日

正欲

©2021 朝井リョウ/新潮社 ©2023「正欲」製作委員会

【出演】稲垣吾郎、新垣結衣、磯村勇斗、佐藤寛太、東野絢香、山田真歩、宇野祥平、渡辺大知、徳永えり、岩瀬亮、坂東希、山本浩司
【監督・編集】岸善幸

多様性を理解するための緩やかアプローチ

正しい正しくないを判断できるのは誰か?

横浜に住む検事の寺井啓喜(稲垣吾郎)は、小学生の息子が不登校になり、その教育方針をめぐり妻の由美(山田真歩)と対立している。

広島のショッピングモールで、契約社員として働く桐生夏月(新垣結衣)は、職場と実家を行き来するさえない毎日を送っている。そんな時、中学の時の同級生で転校してしまった佐々木佳道〈磯村勇斗)が、地元に戻っていることを知る。

大学生の諸橋大也(佐藤寛太)は、ダンスサークルに所属し、校内の準ミスターに選出されるほど容姿端麗だが、他人との深い交流を嫌う隠れたの一面を持っている。ある日、学園祭の実行委員の神戸八重子(東野絢香)から、フェスへの出演依頼を受ける。

原作は朝井リョウの同名小説。朝井リョウは岐阜県垂井町出身で、2010年、大学在学中に「桐島、部活やめるってよ』で、すばる文学賞を受賞した。同作は12年に吉田大八監督によって映画化もされた。その後、12年に発表した「何者」で直木賞を男性作家としては最年少で受賞し、16年に三浦大輔監督によって映画化。他にも『チア男子‼︎』(風間大樹・監督/19年)、昨年公開された『少女は卒業しない』(中川駿・監督)があり、映画との縁も深い。

21年に発表された「正欲」は、柴田錬三郎賞に輝いた。

監督は『あゝ、荒野』(17年)で、数々の映画賞に輝く高い評価を受けた岸善幸で、同作でコンビを組んだ港岳彦が脚本を手がけている。

置かれた環境も年齢も違う人たちを巧みな構成力で、絡み合う物語に仕立てている。そして、単純な理解を拒む、複雑で不可解極まりない、個に収束していた本性をあぶり出していく。

象徴的に水を使った演出は効果的ではあるが、イメージが先行してしまうのが、少し勿体ない気がする。

多様性への理解に単純明快な回答などないという、潔いメッセージが鋭い。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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