岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

theater somewhere

ご当地映画を応援しようという観客の熱気溢れる雪国の映画館

2020年03月04日

青森松竹アムゼ(青森県)

【住所】青森県青森市緑3-9-2 サンロード青森アムゼ内
【電話】017-731-1177
【座席】1号館:162席 2号館:106席 3号館:73席

 新宿から夜行バスで早朝の青森駅に着くと、冷たい潮風が頬を刺した。さすがに、12月初旬に東北へ向かう夜行バスは乗客もまばらだ。高校を卒業するまで札幌で過ごした僕は、中学時代の修学旅行や卒業旅行で何度か青森県を訪れており、当時はまだ青函トンネルが完成する前で函館から青函連絡船に乗り換える行為そのものが、より旅気分を高めてくれた。青函連絡船の埠頭がある青森港で思い出すのは『男はつらいよ 寅次郎相合い傘』の冒頭で、寅さんが船越英二演じる気の弱い蒸発男と知り合いになって、函館に渡る前日のシーンだ。夕暮れ時、商売を終えて安宿に戻る寅さんの向こうに青函連絡船がゆっくり入港する姿が印象的だった。ちなみに映画に登場する摩周丸は函館港、青森港には八甲田丸がモニュメントとして係留保存されている。

 当時、駅周辺には乗降客が長い乗り継ぎの時間を潰せる映画館が22館も建ち並ぶ、県下随一の映画街が古川にあった。連絡船が運航しなくなってもしばらくは映画館に人は入っていたが、平成に入ると既存の映画館が次々と閉館してしまい、映画街そのものが無くなってしまった。そんな映画街にあった、松竹の封切館として昭和30年代より続いていた「青森松竹1・2」の館名を引き継いだ姉妹館が今も場所を変えて残っている。駅からバスで15分ほどのところにあるショッピングセンター「サンロード青森」内にある3スクリーンを有する映画館「青森松竹アムゼ1・2・3」だ。

 元々アムゼという全天候型の屋内遊園地で、子供から大人まで幅広い世代が楽しめる施設だった。天井には空中遊泳できる飛行船が設置されていたり、映像に合わせて椅子が振動する体感型のアトラクションやゴーカートがあって多くの来場者で賑わっていたが、年々客足が減少したため平成9年3月に映画館として再オープンした。

 当初は、椅子が振動するアトラクションを映画館仕様に改装した「1号館」と、小さな受付とお菓子売り場を置いただけのロビーも無い簡素なものだったが、オープンして間もなく転機が訪れた。『もののけ姫』と『タイタニック』が公開されたのだ。好調なスタートを受けて地下を全て映画館にしてしまおうと、翌年にはゴーカート乗り場を改装して、「2号館」と「3号館」をオープン。合わせて休憩所や売店を新設されると、子供たちがロビーで走り回れる遊び場のような映画館となった。現在のお客様はシニア層とファミリー層がメインとなっており、その中でも昔からご贔屓にしてくれるシニア層は映画館慣れした方ばかり。作品が替わる度に来場される強者も多い。周囲に学校が多い事から中高生向けのアニメも人気が高く、この時ばかりは普段の客層とガラリと変わる。アニメやアイドル作品の時は、大量のグッズをズラっと並べる事ができる広いショップがあるのもコチラの特長だ。中にはグッズだけをわざわざ買いに来るファンも多い。

 アニメをメインとしながら、ご当地映画や単館系を積極的に上映している。記憶に残るのは平成21年公開の横浜聡子監督作品『ウルトラミラクルラブストーリー』では、青森出身の横浜監督が県内で撮影している事もあって、主演の松山ケンイチと共に舞台挨拶を行ったところ、前日から多くのファンが徹夜で列を作った事だ。こちらのお客様は青森を舞台とした御当地映画を応援しようという気心の方が多く、『奇跡のリンゴ』や、カーリング映画の『素敵な夜、ボクにください』が好評だった。作り手の「地元を盛り上げて行こう!」という思いが伝わって来る作品は、単純に動員数といった数字だけでは表せない雰囲気があるという。


出典:映画館専門サイト「港町キネマ通り」
取材:2016年11月

青森松竹アムゼのホームページはこちら
https://www.s-cinema.com/

語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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語り手:大屋尚浩

平成12年から始めた映画館専門サイト「港町キネマ通り」にて全国の映画館を紹介している。自ら現地に赴き、取材から制作まで全て単独で行う傍ら、平行して日本映画専門サイト「日本映画劇場」も運営する。

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