岐阜新聞 映画部

映画にまつわるエトセトラ

Rare film pickup

元ネタは岐阜にある ホラー映画の新境地

2022年05月02日

『N号棟』《舞台挨拶篇》

©「N号棟」製作委員会

舞台挨拶で明かされた撮影秘話 ちょっと怖〜い話

4月29日昭和の日、公開初日の舞台挨拶が、名古屋ミッドランドスクエアシネマで行われた。

ゲストは主人公の史織を演じた萩原みのりさんと、後藤庸介監督(オリジナル脚本)。

映画は岐阜県富加町で起きた "幽霊団地事件" をもとにしているが、"死恐怖症=タナトフォビア" という精神的な病をキーワードにした、オリジナル作品である。

以下は、その時行われた舞台挨拶のインタビューを再構成したもので、ストーリーに関わる箇所は表現を変更した。進行は映画パーソナリティーの松岡ひとみさんが担当した。

愛知県出身でもある萩原みのりさんの地元トークーではじまる。

「ミッドランドスクエアシネマは、友だちと映画を観に来る場所だったので、その場所に舞台挨拶のために、こうして立っていることが不思議な感じがします」

後藤監督もメーテレでのディレクター経験があることから、名古屋には関わりがある。また、その時の仕事現場が、萩原さんの地元に近かったりして、お二人のやりとりには、コアな地名が飛び交ったりした。

ー映画のもとになった話は、2000年に岐阜県であった事件をもとにしているということですが…

後藤 : そうです。オカルトの世界では結構、有名な話で、当時、ニュースにもなりました。

ーそうですよね。近所というか、地元に近いわけですが、会場のお客さまでもご存じの方いらっしゃいますか?

(会場で数人が手を挙げる)

ー舞台となる団地は、セットとかではなく、実物ですよね?岐阜ではなく、別の場所なんでしょうが…

後藤 : 実際にある廃団地で撮影しました。

萩原 : 撮影初日に現場に入った瞬間から、その異様さに驚かされました。あたりにあるものが、美術じゃないのと、思われるものが、実物だったり。虫の死骸が尋常じゃない数で固まっていたり、あり得ない場所に鳥の白骨死体があったり、撮影に使わない他の部屋に血のシミがあったり…電気は通ってないんですが、エレベーターが止まっているのが、4階だったり、そこだけ灯りがついていて…

後藤 : そうだった。理由はわからないんだけど、不思議なことが多かった。

ー出演作が評判になっている萩原さんですが…

萩原 : 最近よく言われるんです。しんどい、ハードなものが多いから、ファンの方でも、萩原みのりで追ってるのも辛くなるって…何だか、優しいものをやりたい、ラブコメだってやりたいって…

ーでも、本作でも凄いですよね。特にクライマックスの…

萩原 : 今回の撮影は追い詰められた思いがあって、何だかドキュメンタリーを撮っているような感覚で、自分をそこに持っていくという作業でした。そこで出来上がったありのままを撮っていただく…これが結構、大変でした。

後藤 : あのシーンは6時間くらいかかっているんですが、予算のこともあるし、どうしても撮らなければという追い詰められた感じもあった。もう明け方に近い時間なんですが、周りのスタッフが心配し始めた。

萩原 : 何だか自分じゃないみたいな状態で、コントロールできなくなっていて、周りを囲まれて、「死ね!死ね!」って連呼されているわけで、気がついたらカメラマンさんを焦点の定まらない目でジーッと見つめていたり。それで、自分から言い出しました。

後藤 : 10分間休憩するって…

萩原 : 長回しで、筒井真理子さんに抱き止められて、顔色が異様だって…』

後藤 : 心配したんですけど、止めるに止められない。筒井さんがアドリブでガンガン責めてくるし。

ー凄いですよね、あの台詞!

後藤 : 「死ね!」顔色が真っ白で、普通じゃなかった。

萩原 : 完全にキャパオーバーの状態で壊れてました。

ーそして、ラストシーンの解釈なんですけど、凄いシーンから、一転、優しい映像なんですが…

萩原 : 演じているという解釈だと、生とか死ではなく、私生活でも大学生活でも感じていた、孤独な閉塞感からの解放感って言う気持ちでした。

後藤 : まあ、広い意味では確実に死なんですが、それが死後の世界なのか、死の直前に見た走馬灯のようなものなのか…祈りとか、願いみたいなものを感じてもらえたらと思っています。

ー最後に、映画をこれから観よう、あるいはもう一度観ようと思っている皆さんにメッセージを…

後藤 : 筋立てが上手くなくて、よく理解できないところがあるかもしれないですけど、映画の肌ざわりというか、感覚的に味わっていただけたらと、思っています。その上で、現在の困難な時に、どう生きるべきかとか、生きる意味について考えていただけたらと、思っています。

萩原 : 解釈は皆さん、人それぞれでいいと思うんです。映画には色んなヒントが散りばめられています。例えば、序盤の大学の教授室のシーン。ちょっとしたことですが、小道具とかに気づかれると、また、違った見方ができると思います。是非、リピートして下さい。

ー今日はありがとうございました。後藤監督と萩原さんでした。

(『N号棟』は関シネックスマーゴで公開中)

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

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