岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

市井の人たちが繰り広げる古典的なメロドラマ

2024年03月01日

枯れ葉

© Sputnik Photo: Malla Hukkanen

【出演】アルマ・ポウスティ、ユッシ・ヴァタネン、ヤンネ・フーティアイネン、ヌップ・コイヴ
【監督・脚本】アキ・カウリスマキ

ラジオから流れる日本の歌はな〜んだ?

2017年、フィンランドの名匠アキ・カウリスマキ監督は、突然、引退宣言した。

舞台はフィンランドの首都ヘルシンキ。

スーパーマーケットに勤務するアンサは、規定の理由で廃棄処分しなければならない商品を持ち帰ろうとした業務違反で解雇される。

工事現場で働くホラッパは、遅刻を上司から注意されたり、現場でケガをしたり、危うい日常をこなしているが、1番の問題は酒が欠かせないこと。

ある夜、ホラッパは同僚と出かけた "カラオケバー" で、アンサと運命的な出会いをする。

カウリスマキ作品では、市井の労働者が主人公になることが多い。その生活は決して裕福なものではなくても、仕事にはそれなりの誇りを持って臨んでいるように見える。

また、登場人物たちは、感情の起伏を普段は態度や表情に表さないことが多い。それ故に、社会の理不尽さに対する激しい怒りは、妙に生々しく厳しかったりする。

アンサはひとり住まいの部屋でラジオを聴く。そこから流れるニュースは、ロシアのウクライナ侵攻や攻撃を伝えるもので、時代の設定は明らかに "現在" なのだが、その生活ぶりからは、時代錯誤が見え隠れする。

例えば、アンサとホラッパは映画館デート(この時の映画の選択にもひと言触れたいが…)をして、再会を約束するのだが、何故か、現在の連絡ツールの当たり前であるはずのスマホ=携帯電話は姿を見せず、連絡先は紙に書いたメモで渡される。大切なメモはホラッパのポケットからこぼれ落ち、ふたりの再会は叶わないまま、アンサとホラッパは、あの映画館の終演時間に相手の気配を探しに行くという古典的な風合いのすれ違いで描かれる。このメロドラマの定石展開は、日本通の現れか?

引退宣言を撤回して発表した本作。独特の間から生まれる空かしがユーモアとしてまぶされ、それでいてしんみりとした気分へと誘う、カウリスマキ映画健在である。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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