岐阜新聞 映画部

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カウリスマキが戻ってきた!冴えない中年男女の恋物語

2024年03月01日

枯れ葉

© Sputnik Photo: Malla Hukkanen

【出演】アルマ・ポウスティ、ユッシ・ヴァタネン、ヤンネ・フーティアイネン、ヌップ・コイヴ
【監督・脚本】アキ・カウリスマキ

ゆる~い空気感とオフビートなユーモア

アキ・カウリスマキの映画は、労働者階級の中でもとりわけ目立たない人が主人公だ。映画の中の俳優は無表情で棒立ちのうえセリフは棒読み。そのうえ背景は無機質でフィックス撮影というスタイルなので、ワンシーンでもそれとわかるのが特徴だ。

CINEXでも上映された『希望のかなた』(2017/キネ旬7位)を最後に引退宣言をしていたが、それを撤回し6年ぶりに帰ってきたのが『枯れ葉』である。ここ最近ではケン・ローチ監督や宮崎駿監督も引退宣言を撤回して新作を作ったが、こういうのは大歓迎である。

  カウリスマキの発言によると本作は、キャリア初期の代表作で「労働者3部作」と言われる『パラダイスの夕暮れ』(1986)、『真夜中の虹』(1988)、『マッチ工場の少女』(1990/キネ旬7位)に続く第4弾ということで、新たなキャリアの始まりの予感がする(と思いたい)。

本作の主人公はいつものように冴えない中年の男女だ。スーパーに勤めるアンサ(アルマ・ポウスティ)は理不尽な理由で職場をクビになり、リサイクル工場に勤めるホラッパ(ユッシ・ヴァタネン)はアルコール依存症で仕事を失う。

職なし、金なし、家族もなし。6年連続で世界幸福度ランキング1位というフィンランドにあって取り残され感が強いが、そんな悲惨な状況をリアルに見せないのがカウリスマキであり、いつものゆる~い空気感とオフビートなユーモアで、観ている我々はほっこりする。

その2人がカラオケバーで出会うのだが、すれ違いばかりの展開で、もどかしいにもほどがある中年男女のボーイミーツガールとなっていく。

81分という凝縮された上映時間に、6年のブランクは全く感じられないいつものすっとぼけた内容だが、ラジオからはロシアのウクライナ侵攻のニュースが流れており、カウリスマキの静かな怒りが垣間見られる。2023年キネ旬ベストテン3位。6本目のランクインだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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