岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

人間の可笑しみと哀しさ、笑いあり涙ありの好編

2024年02月28日

⼥優は泣かない

©2023「⼥優は泣かない」製作委員会

【出演】蓮佛美沙⼦、伊藤万理華、上川周作、三倉茉奈、吉⽥仁⼈、⻘⽊ラブ、幸⽥尚⼦、福⼭翔⼤、緋⽥康⼈、浜野謙太、宮崎美⼦、升毅
【監督・脚本】有働佳史

業界のあるあるは爆笑の連続だ

本作は、CMプランナーで熊本県荒尾市出身の有働佳史さんが、大好きな地元・荒尾を舞台にして作った初長編映画だ。監督のインタビューによれば、脚本完成に2年近くを費やして2021年8月にクランクインしたもののコロナ禍の影響を受け2日目で撮影中断。1年3か月のブランクを経て、2022年10月末再クランクインしてやっと完成したということだ。

私は昨年の名古屋公開では見逃してしまったので、会社を早引きして月曜日にCINEXで観たが、そんな難産さを露ほども感じさせない、人間の可笑しみと哀しさを笑いと涙で優しく包み込んだ、ウェルメイドな好編であった。

デビュー10年、不倫スキャンダルでバッシングを受け再起に掛ける女優の安藤梨花(本名:園田梨枝)(蓮仏美沙子)、希望してないバラエティーに配属され結果が出せないイダテレのディレクター瀬尾咲(伊藤万理華)。2人とも崖っぷちである。

「安藤梨花が生まれ故郷で素顔を見せる」という密着ドキュメンタリーを撮影するという設定だが、段取りとやらせのオンパレードでこれが馬鹿に可笑しい。いい加減で調子のいい梨花の事務所の社長や、無責任で何も考えてない咲の上司もからみ、撮影はドタバタだ。有働監督は本業がCMプランナーなので、業界のあるあるなんだろうと想像するが、見ているこちらは爆笑の連続である。

そこに絡んでくるのが、梨花が「10年前に、父親の反対を押し切って、高校を中退してまで上京し女優を目指した」ということで、関係の悪い姉やカッコよく育った弟、「ニ度と戻って来るな」と言われた父との話が混じり合っていく。

全体は実にうまいコメディーなのだが、シリアスな部分も違和感なくまぶされており、「笑いあり涙あり」の大満足のご当地映画に仕上がっている。

用事で行けなかったが、CINEXでのトークショーも補助席まで出て大盛況だったとのこと。いい気持になれる映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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