岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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17歳の冬 喪失から歩みだす成長物語

2024年02月21日

Winter boy

© 2022 L.F.P・Les Films Pelléas・France 2 Cinéma・Auvergne-Rhône-Alpes Cinéma

【出演】ポール・キルシェ、ジュリエット・ビノシュ、ヴァンサン・ラコスト、エルヴァン・ケポア・ファレ
【監督・脚本】クリストフ・オノレ

特異なで括らない誰にでも起こり得る体験

冬の夜…

学校の寄宿舎で暮らすリュカのもとに、父親が事故で亡くなったと連絡が入る。

気持ちの整理もできないままの久しぶりの帰郷。アルプス山麓にある実家では、悲しみに包まれた家族が待っていた。

愛する父を突然失った17歳のリュカは、どうにも埋めることのできない、心に空いた穴を抱えたまま、兄に連れられてパリを訪れる。

そこには兄の同居人のリリオがいた。

年上の彼はアーティストとして自分の世界を持っていて、傷ついたリュカのことを気遣い、優しく接してくれる。そんなリリオに次第に心惹かれていくのだが。

監督のクリストフ・オノレは、小説家としてキャリアをスタートさせている。その作品には2000年初頭の当時はタブー視されていた、エイズや同性愛をテーマにしたもので、テレビ映画化の際には、赤裸々な表現ゆえに物議を醸し出すことになった。

2004年にジョルジュ・バタイユの小説の映画化『ジョルジュ・バタイユ ママン』(日本公開06年)で映画監督デビューを果たし、その後も、ヌーヴェルヴァーグの影響を感じさせる作品を手がけている。

本作は自身の少年時代を題材にした自伝色の強い、オリジナル脚本作品である。

リュカを演じたのは、『ふたりのベロニカ』(1991年/日本公開92年)、『トリコロール/赤の愛』(1994年)の2本のクシシュトフ・キシェロフスキ監督作品の主演に抜擢され、一躍その名を知られるようになったフランスの女優イレーヌ・ジャコブを母に持つポール・キルシェ。母親の面影を時折感じさせつつ、映画初出演とは思えない演技で、幼さを残しながら揺れ動く少年の心情を上手く表現している。

自らに深く関わる物語からか、少年の成長の過程を性急に詰込み過ぎたきらいがあり、心の区切りのとしての決意が、見えづらくなってしまったのは勿体ない。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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