岐阜新聞 映画部

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「そんな時代もあったね」と語る、オノレ監督の自伝的映画

2024年02月21日

Winter boy

© 2022 L.F.P・Les Films Pelléas・France 2 Cinéma・Auvergne-Rhône-Alpes Cinéma

【出演】ポール・キルシェ、ジュリエット・ビノシュ、ヴァンサン・ラコスト、エルヴァン・ケポア・ファレ
【監督・脚本】クリストフ・オノレ

父さんはわざとトラックに突っ込んだのかも?

『ウィンターボーイ』(原題Le lyceen=高校生)は、ゲイを公表しているクリストフ・オノレ監督の半自伝的映画だ。オノレの父が交通事故で亡くなったのは彼が15歳で高校生の時。オノレは1970年4月生まれなので1985年頃となるが、映画の中の時代設定としては、もう少し現代寄りである。

オノレを体現する主演の役名はリュカで、演ずるのは瑞々しい美少年のポール・キルシェ君。彼の母は『トリコロール/赤の愛』や『エレニの帰郷』などのフランスを代表する女優イレーヌ・ジャコブ、そして父も俳優というサラブレッドである。

全寮制の高校に通うリュカは、すでに寮内にSEXする友だちがいるという早熟な少年である。ゲイは家族も公認、父の葬式は無宗教で政治的にはリベラルという相当進んだ家庭だ。

父の死の2週間前、リュカが同乗する父の車がハンドルの操作ミスで道端に突っ込んでしまう。父の死を前にして、このことが予兆として蘇ったのか、リュカは大声で泣き叫び鎮痛剤を打たれる。

気分転換に、パリの大学に通うノンケの兄カンタン(ヴァンサン・ラコスト)の下宿先へ滞在することになるリュカ君であるが、兄の同居人はゲイの黒人リリオ(エルヴァン・ケポア・ファレ)だ。リュカはすぐに憧れの気持ちを抱く。

映画はLGBTQをことさら大きく取り上げるというよりも、当たり前の恋愛やSEXとして表現される。オノレ監督がゲイを描くのに気負いはないようだ。

しかし空虚な心を満たすためとはいえ、さすがに男娼行為までは兄も家族も見過ごせない。パリから地元に帰される。

その帰り道、心に思っていた「父さんはわざとトラックに突っ込んだのかも」と言って母(ジュリエット・ビノシュ)を怒らせたりもする。母が降りた車の中で、衝動的に手首を切り、救急搬送されるリュカ。

「そんな時代もあったね」と、オノレ監督が赤裸々に語った自伝的映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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