岐阜新聞 映画部

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親子が正面切って向き合うことの大切さを描いた映画

2024年02月20日

僕らの世界が交わるまで

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【出演】ジュリアン・ムーア、フィン・ウォルフハード、アリーシャ・ボー、ジェイ・O・サンダース、ビリー・ブリック、 エレオノール・ヘンドリックス ほか
【監督・脚本】ジェシー・アイゼンバーグ

エヴリンの権威主義とジギーの承認欲求

本作に登場するカッツ家は、教育程度が高く暮らしにも余裕がある中産階級の上位層、いわゆるアッパーミドル層である。私の勝手な思い込みではあるが、『僕らの世界が交わるまで』のようなアート系映画を支える代表的な層であり、日本の観客にも本作の親子関係はグサグサと刺さりまくるのではないか。

映画の主役は、DV被害に遭った女性のためのシェルターを運営する母エヴリン(ジュリアン・ムーア)と、ネットのライブ配信で人気を集める高校生の息子ジギー(フィン・ウルフハード)。エヴリンは閑暇を高尚な趣味や社交でなく社会貢献に勤しむ意識高い系であり、ジギーはフォロワー数2万人という初心者以上インフルエンサー未満という微妙な数のユーチューバーである。2人ともそれなりの成功はおさめているが、食っていけるだけのビジネスとはなってない。

エヴリンは「いいことをやっている」という権威主義、ジギーは「自分なりに頑張っている」という承認欲求があり、どちらの立場に立っても「こころあたり」があるのだ。

そして正反対で相容れないようにも見えるが、実は親子はそっくりということが、映画を観ているとわかってくる。というか自分に当てはめてみて「実は同じ」ということに気が付く。

エヴリンは、リベラルで政治的意識も高いのだが、息子は自分の理想とは全く違う姿に成長している。ジギーは、物事をあまり深く考えず表面的に生きているタイプだが、権威主義的な母親には反発がある。

しかし結局は、エヴリンはシェルターにいる男の子に息子の代わりを求め、ジギーの彼女は母親に似た政治的意識の高い子になってくる。

俳優のジェシー・アイゼンバーグの初監督作は、親子が正面切って向き合うことの大切さを描いている。そんなことはわかっているが、こうやって映画で観ていると、ヒントがいっぱい詰め込まれていて親子関係の参考になってくる。親子で一緒に観たいものだ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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