岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

西部開拓時代の片隅にいた男の友情物語

2024年02月16日

ファースト・カウ

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【出演】ジョン・マガロ、オリオン・リー、トビー・ジョーンズ
【監督・脚本】ケリー・ライカート

自然と息遣いが生活を醸し出し映像美を引立てる

この作品ははじめ、1800年代前半のヨーロッパ、チェコスロバキアあたりを舞台に構想された。

原作はジョナサン・レイモンドの小説だが、それは40年に渡る物語であったため、監督のケリー・ライカートとレイモンドの共同作業による脚本化は、原作に登場する人物を再構築して、新たなキャラクターを創造し、アメリカ・オレゴンを舞台にした、1820年台の西部開拓時代の話へと大きく翻案された。

ボストンからやって来た料理人のクッキーは、中国人の移民で、成功を掴み取りたい野心家のキング・ルーと出会う。

周囲にはびこる猛者ぞろいの開拓者からはあぶれてしまう2人は、村にいる一頭だけの牛(=ファースト・カウ)のミルクに目をつけ、それを材料にしてドーナツを作り、商売にして一攫千金を試みる。

貴重なミルクを如何に手に入れるか…甘いお菓子の誘惑に西部男たちが反応するか?

西部開拓時代の話と言えば、ガンファイトたっぷりの犯罪要素満載の、活劇西部劇がすぐに思い浮かぶが、この作品はあくまでも地味に静かに展開する。

男の友情物語にしたところで、西部劇にある下心や裏切りは封印されている。

その静謐さを支えるのは、クリス・プローヴェルトの撮影で、簡素な家屋や自然のままの森のローションを昼夜の光源の違いを巧みに屈指した、光使いの映像が素晴らしく、映画を絵画のように引き立てている。

また、当時の人たちの生活の息遣いが随所に感じられることも、映画に深みを与えている。

ルーとクッキーの会話から感じ取れる細やかな心理の変化も見事にすくいとる、演出の綾と、ジョン・マガロ、オリオン・リーの好演も特筆に値する。

これまでインディーズを中心に活躍していたケリー・ライカート監督だが、映画づくりの信念は、今後もブレることはないと確信する。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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