岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

老夫婦を2つのカメラが追っていく、追体験型映画

2024年02月07日

VORTEX ヴォルテックス

© 2021 RECTANGLE PRODUCTIONS – GOODFELLAS – LES CINEMAS DE LA ZONE - KNM – ARTEMIS PRODUCTIONS – SRAB FILMS – LES FILMS VELVET – KALLOUCHE CINEMA

【出演】ダリオ・アルジェント、フランソワーズ・ルブラン、アレックス・ルッツ
【監督・脚本】ギャスパー・ノエ

歳をとり死に向かっていく様は人それぞれ

過激な暴力描写や即物的なセックス描写などアクの強い作風が売りのギャスパー・ノエ監督であるが、私は今までずっと敬遠してきて配信やDVDを含め一切観たことが無かった。

『ヴォルテックス』が初のノエ監督作となるが、過激さを封印したことで、心配していた私にとってはラース・フォン・トリアー監督作のような「全く受け付けない」という事はなかった。

パリのアパルトマン(集合住宅)に住む、心臓病を抱える映画評論家の夫(ダリオ・アルジェント)と、認知症を患う元精神科医の妻(フランソワーズ・ルブラン)の老夫婦。

この2人が主人公で、映画は構図をあまり考えずに手持ちカメラで被写体としての2人を追っていく。あたかもドキュメンタリー映画のようだ。

ほどなくして画面は左右に2分割され、全く同一のシーンを2つのカメラが2つの視点で追っていくのを観客に見せていく。今までにもあったとは思うが、ほぼ全編続くのは見たことが無い。それはコロナ以降に急激に導入されたオンライン画面のようであり、複数カメラで撮影したシーンの編集画面のようでもある。さすがノエ監督、普通の映画で終わらせないのだ。

この分割画面は、見ている観客に緊張感をもたらす。夫婦を別々にそれも同時に捉えていくことで、死に向かっていく孤独や悲哀が増幅され、独立した個人が強調されていく。同じ時間・同じ空間にいながら、妻が認知症ということで直接的な意志が交わる事もない。夫が書いた原稿を破り捨ててトイレに流し、「机の上を片付けた」という妻がもの哀しい。

主演のダリオ・アルジェントは、『サスペリア』(1977)の監督で当年83歳。フランスのベテラン女優フランソワーズ・ルブランは79歳。2人とも、クリエイティブさが垣間見える紳士淑女をわざとらしくなく自然に演じて完璧である。

歳をとり死に向かっていく様は人それぞれだ。新たな見せ方の追体験型映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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