岐阜新聞 映画部

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社会の闇を浮き上がらせた人間ドラマの傑作

2024年02月02日

市子

©2023 映画「市子」製作委員会

【出演】杉咲花、若葉竜也、森永悠希、倉悠貴、中田青渚、石川瑠華、大浦千佳、渡辺大知、宇野祥平、中村ゆり
【監督】戸田彬弘

抑えた演技で深い哀しみを表現した杉咲花

戸田彬弘監督の「市子」は、突然失踪した女性・市子の謎めいた半生を、彼女の行方を捜索する恋人と共に辿る社会派人間ドラマの傑作。

戸田彬弘監督自身が主宰する劇団チーズtheaterの旗揚げ公演として上演した舞台「川辺市子のために」の映画化。舞台の方は未見だが、映画の方は元が舞台劇とは思えないほどリアルな生活感のある作品になっている。

主人公である川辺市子(杉咲花)は、同棲中の長谷川義則(若葉竜也)からプロポーズを受けた翌日忽然と姿を消してしまう。市子の行方を追う長谷川は、彼女の幼なじみや昔の友人など関わりのあった人々を訪ね話を聞いて回る。そして川辺市子の信じがたい悲劇的な真実が浮かび上がる。

主演の杉咲花が感情を抑えた演技で底なしの深い哀しみを表現していて圧巻。共演の若葉竜也、中村ゆり(母親)、森永悠希(高校の同級生)、宇野祥平(刑事)らも好演。

戸田彬弘監督は自主映画で数々の賞を受賞し、2014年に「ねこにみかん」で長編デビューした期待の若手監督。ミステリアスな展開から、社会の闇を浮き上がらせた戸田監督の手腕は高く評価したい。

「市子」は毎日映画コンクールの女優主演賞(杉咲花)、日本アカデミー賞優秀主演女優賞(杉咲花)、高崎映画祭最優秀助演俳優賞(中村ゆり)を受賞。

岐阜新聞映画部でも日本映画ベスト・テン第8位と主演女優賞(杉咲花)に選ばれた。

私個人の予想では、キネマ旬報の日本映画ベスト・テン入選と杉咲花の主演女優賞受賞も有力だとみている。

きっと日本のどこかにいるであろう同じ境遇の存在しないことになっている人々に思いを馳せずにはいられない、長く記憶に残る素晴らしい作品である。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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