岐阜新聞 映画部

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黒人差別に楔を打ち込んだ母の愛と正義

2024年01月18日

ティル

© 2022 Orion Releasing LLC. All rights reserved.

【出演】ダニエル・デッドワイラー、ウーピー・ゴールドバーグ、ジェイリン・ホール、ショーン・パトリック・トーマス、ジョン・ダグラス・トンプソン、ヘイリー・ベネット
【監督・脚本】シノニエ・チュクウ

時を経過しても居座り続ける差別の意識は他人事ではないのかも知れない

人種差別は何故なくならないのか?

昨年公開された外国映画では、LGBTQの理解に呼応する、フェミニズムを孕んだパワハラ、セクハラを題材にしたものや、同性愛が違法だった時代を描いた作品が目立った。

アメリカ映画では、公民権運動に関わる人種差別の時代、過去を描いた作品は多く存在するが、今も発生する事件は絶えることなく、差別は現在進行形であることを痛感する。

1955年アメリカ・イリノイ州シカゴ。夫を戦争で亡くしたメイミー・ティルは、当時、空軍では唯一となる黒人女性職員として働き、14歳になる息子のエメットと平穏な毎日を送っていた。

ある日、親子は親類を訪ねるため、生まれて初めて故郷を離れ、ミシシッピ州のマネーへ向かう。そこで待ち受けている悲劇に気づくはずもなく…。

昨年秋に公開された『キリング・オブ・ケネス・チェンバレン』(デビッド・ミデル監督)は、ニューヨークを舞台にした、警察の誤認による、黒人男性の殺害事件を生々しく描いて記憶に新しい。これは2011年に起きた実話をもとにしている。誤認、誤解の根底に存在する根強い差別視の傾向。

マネーの町の飲食雑貨店で、エメットは白人女性に向けて口笛を吹く。これが白人には気に食わない、怒りを買うことになる行為であることが怖い。そしてエメットは複数の白人男性の襲撃により殺害されてしまう。

ここにはアメリカの地域による温度差が見える。ティル親子が暮らしていたシカゴは、北中西部の大都市。マネーは南部ミシシッピ州。黒人に対する寛容さの浸透度には、かなりの違いがあった。

「白人に逆らったら黒人に生きる場所はない」という黙認にメイミーは激しく反発。事実を世間に広く知らしめ、不当な社会の構造にメスを入れていく。母の愛と正義が炸裂する力強い映画である。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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