岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

ファッションという言葉は嫌い、半年で寿命が尽きると思うから

2018年04月17日

ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男

© 2016 Reiner Holzemer Film – RTBF – Aminata bvba – BR – ARTE

【出演】ドリス・ヴァン・ノッテン、アイリス・アプフェル、スージー・メンケス
【監督・脚本・撮影・製作】ライナー・ホルツェマー

孤高の職人の創造の源泉に迫るドキュメンタリー

 ファッション界におけるドリス・ヴァン・ノッテンは、流行り廃りとは一線を画した地味で保守的でトラディショナルな立ち位置であるが、的確にトレンドのツボを押さえた知る人ぞ知るデザイナーである。ポール・スミスやゴルチェのようにさまざまなラインを多角的に展開するのでなく、生真面目に自分の手の届く範囲で勝負する。それは、頑固職人が暖簾分けした弟子だけに名乗ることを許す、銀座の老舗のようである。
 孤高の職人ドリスの1年間に密着したこのドキュメンタリーは、彼の創造の源に迫っていく。ドリスのファッションの特徴は、絶妙な色の組み合わせとインドの刺繍に代表される美しく艶やかな柄。天才的なインスピレーションから、降って湧くかのごとくデザインを創出するのかと思っていたが、彼は世界中から取り寄せた布地を、何度も何度も組み合わせ、足し算引き算をしながら地道な作業を繰り返していく。カメラはその姿をじっくりとらえていく。さらに色とりどりの花に囲まれた広大な邸宅での、公私ともに信頼する同性愛のパートナーとの幸せに満ちた生活も、彼のアイデアの源泉だと分かる。
 彼の普段着は、ストライプのシャツにコットンパンツ、白のスニーカーといういたってシンプルないで立ち。晴れ舞台である、パリのオペラ・ガルニエでのファッションショーの最後、ランウェイの端で恥ずかしげに挨拶する姿からは、彼の誠実で謙虚な人柄を垣間見ることができる。
 ドリスは言う。「とにかくファッションという言葉は嫌いです。そう呼ばれるものは半年で寿命が尽きると思っています」。タイムレスで長く付き合える洋服を目指し、広告宣伝をせず、商業主義からは遠く離れたこのブランド。ファッション上級者が上手に着こなす、どちらかというとメンズに強いブランドだと思うが、この映画を観てドリスの洋服の奥深さがよく分かり、ますます憧れのブランドとなってきた。ファッショニスタ必見の映画である。

『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』岐阜CINEXほか、全国で公開中。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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