岐阜新聞 映画部

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正月映画にふさわしいオシャレで小粋な喜劇

2024年01月11日

私がやりました

©2023 MANDARIN & COMPAGNIE - FOZ - GAUMONT – FRANCE 2 CINÉMA - SCOPE PICTURES – PLAYTIME PRODUCTION

【出演】ナディア・テレスキウィッツ、レベッカ・マルデール、イザベル・ユペール、ファブリス・ルキーニ、ダニー・ブーン、アンドレ・デュソリエ
【監督】フランソワ・オゾン

ビリー・ワイルダー監督にオマージュを捧げる

フランソワ・オゾン監督は、作家性を持ちながらも一つのジャンルにこだわらず、良質な娯楽映画をサラサラっと撮ってしまうようないわば天才監督である。私が敬愛する木下惠介監督にあらゆる面で似ていて大好きな監督のひとりだ。

『私がやりました』は、オゾン監督がコメディーの天才ビリー・ワイルダー監督にオマージュを捧げる、フレンチ風エスプリを加味したスクリューボールコメディの傑作である。

本筋は女性参政権が認められていなかった1935年のパリを舞台に、新人女優マドレーヌ(ナディア・テレスキウィッツ)と新進弁護士ポーリーヌ(レベッカ・マルデール)の貧乏ルームメイト同士が結託し、セクハラ映画プロデューサーの殺人事件をマドレーヌが「私がやりました」と告白するところから始まる。

これは逆でっちあげで実際はやっていないが、「力づくで襲われた結果の正当防衛」だと主張して、女性解放運動を味方につける。もちろん有名になるための算盤づくであり、それは見事に成功する。

そこに颯爽とあらわれる真犯人が、サイレント映画時代のスターでもはや忘れされつつあった大女優オデット役の我らがイザベル・ユペールなのだ。「何を言ってるの!私が犯人よ」。

その悠然たる態度は、ワイルダー監督の傑作『サンセット大通り』(1950)で往年の大女優を演じたグロリア・スワンソンの如くで、映画マニアには爆笑必至だ。

イザベル・ユペールは今でも大スターなので、彼女が余裕をもって楽しそうに演じているのを見ると、シリアスな悲劇であった『サンセット大通り』へのオゾン流アンサーになっているようでまた楽しい。

あとから知ったのだが、映画の序盤でマドレーヌとポーリーヌが映画館で観ているのはワイルダー監督のデビュー作『ろくでなし』(1934/日本未公開)ということ。ワイルダー愛がたまらない。

正月映画にふさわしいオシャレで小粋な喜劇である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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