岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品青春デンデケデケデケ B! ”ロイヤルオモイヤル” プロジェクト 大林宣彦監督作品35ミリフィルム上映第1弾 2023年12月21日 青春デンデケデケデケ ©️大林宣彦事務所 【出演】林泰文、大森嘉之、浅野忠信、長堀剛敏、佐藤真一郎、岸部一徳、ベンガル、根岸季衣、尾美としのり 【監督】大林宣彦 「映画はおもちゃだった」監督の真骨頂 大林宣彦監督は『HOUSE ハウス』(1977年)にはじまった…は、ちょっと間違い。 その歴史を紐解けば何と、戦中の昭和19(1944)年までさかのぼる。監督は昭和13(1938)年生まれだから、6歳の頃か? 『ポパイの宝島』と題するその作品は、1分ほどのアニメーションだが、何と、35mmフィルムに直接手描きされたものだった。 とあるインタビューでは、 「エジソンが映画というおもちゃを発明して、僕の部屋に送り込んでくれた」 と、告白しているように、大林宣彦にとって、映画は子ども時代からずうーっとおもちゃだった。 『HOUSE ハウス』は大林監督の劇場映画の初監督作品で、東宝の百恵×友和映画『泥だらけの純情』の併映作品として公開された。 初見の感想は ”驚き” だった。 後に(一部では直後から)、元祖ジャパニーズホラーと高い評価を受けたが、「CM映像の数珠つなぎ」とか、「女子(おんなこども)の映画」と、差別的な酷評が目立った。 初見の感想を驚きとしたのは、おはなしも突拍子もない(というかよくわからない)上に、ケバくて刺激的な映像に ”怯んだ” と表現するのが正解かも知れない。 劇場ではメインが入れ替わるという支持もあったり、熱狂的なファンを獲得したことも確かで、大林宣彦監督は一作にして伝説を獲得した…これは大袈裟ではなく。 第3作は、百恵×友和映画『ふりむけば愛』(78年)、続く、4、5作では、『金田一耕助の冒険』(79年)、『ねらわれた学園』(81年)と、当時隆盛だった角川映画作品を監督した。 個人的には、その次にあたる第6作『転校生』(82年)の衝撃は忘れ難い。 山中恒の児童文学「おれがあいつであいつがおれで」を原作にした、体が入れ替わってしまった中学生の男女の青春映画。この手のファンタジー(これはあきらかな差別)で涙したのは初めての体験だったから…。 と、ここで振り返ると、大林監督のスタンスは『HOUSE ハウス』の頃から何も変わっていないことに気づく。そう、ずうーっと映画はおもちゃだった。 ”ロイヤルオモイヤル” プロジェクト「大林宣彦監督作品35ミリフィルム上映」第1弾で『青春デンデケデケデケ』(92年)を31年ぶりに再見した。 『青春デンデケデケデケ』(1992年) 1965年春。高校入学を控えた藤原竹良(林泰文)は居眠り中、ラジオから流れてきた ”ベンチャーズ” のギターの音色の衝撃波を喰らったことではじまる、ロック漬けの高校生活3年間を描く、青春グラフィティーである。 原作は、91年に第106回直木賞を受賞した芦原すなおの同名小説で、発表の翌年というスピード映画化になる。 小説は文藝賞の応募規定に合わせるため、800枚から400枚に修正削減された。文藝賞受賞後に直木賞をW受賞したが、これは純文学誌「文藝」掲載からの初の直木賞受賞作品でもあり、何かと当時は話題になった。 その後、オリジナルバージョンは95年に私家版として出版された。 今回のロイヤル劇場での鑑賞は、初見以来の再見。記憶というものがいかに頼りないものであるのかを実感することになった。 オープニングと後半のバンド ”ロッキング・ホースメン” のデビューコンサートの一部しか憶えていなかった。それどころか、他の映画と混同していた部分すらあって、ほぼ、初見のような、良く言えば新鮮な感覚で鑑賞できたのは、ケガの功名だった。 主人公の高校生たちは、所謂、全共闘世代にあたるわけで、ヘルメットやゲバ棒ではなく、ギターとスティックで音楽に没頭した。言葉に語弊があることは承知の上で言うなら、純真で清々しい(政治的なを否定はしない)青春を描いている。 デフォメル気味の個性派揃いの登場人物が面白く、それを演じる役者のそれぞれの若き日を見るだけでも楽しくなる。 きれい事と否定するなかれ、高校時代って、こんなもん!とうなづくこと仕切り。 ずーっと注目していた大林監督らしい、またはお好きな? 男のお尻が何カットも登場する。 主演の竹良を演じた林泰文は子役としてデビューした俳優だが、大林作品では、86年の『野ゆき山ゆき海べゆき』に出演、映画デビューを果たし、続く『漂流教室』(87年)で主役に抜擢された秘蔵っ子でもある。最近でも話題になったテレビドラマ「VIVANT」にも出演している。 そして、大林演出は自由奔放な撮影、編集で、圧倒的に遊び続けている。50歳を過ぎても若々しい快作である。 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 100% 観たい! (6)検討する (0) 語り手:覗き見猫映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。 2024年09月26日 / どら平太 日本映画黄金時代を彷彿とさせる盛りだくさんの時代劇 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 助けを求める人はもはや敵ではなく、ただの人間だ 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 海の男たちが下す決断を描くヒューマンドラマ more 2019年01月30日 / 御成座(秋田県) 街の人たちの勘違いから復活した秋田の映画館 2020年04月15日 / シネマトーラス(北海道) 流浪の映画青年が作り上げた北の映画館 2022年08月10日 / シネマヴィレッジ8(青森県) リンゴ畑の真ん中にあるシネコンで家族揃って。 more
「映画はおもちゃだった」監督の真骨頂
大林宣彦監督は『HOUSE ハウス』(1977年)にはじまった…は、ちょっと間違い。
その歴史を紐解けば何と、戦中の昭和19(1944)年までさかのぼる。監督は昭和13(1938)年生まれだから、6歳の頃か?
『ポパイの宝島』と題するその作品は、1分ほどのアニメーションだが、何と、35mmフィルムに直接手描きされたものだった。
とあるインタビューでは、
「エジソンが映画というおもちゃを発明して、僕の部屋に送り込んでくれた」
と、告白しているように、大林宣彦にとって、映画は子ども時代からずうーっとおもちゃだった。
『HOUSE ハウス』は大林監督の劇場映画の初監督作品で、東宝の百恵×友和映画『泥だらけの純情』の併映作品として公開された。
初見の感想は ”驚き” だった。
後に(一部では直後から)、元祖ジャパニーズホラーと高い評価を受けたが、「CM映像の数珠つなぎ」とか、「女子(おんなこども)の映画」と、差別的な酷評が目立った。
初見の感想を驚きとしたのは、おはなしも突拍子もない(というかよくわからない)上に、ケバくて刺激的な映像に ”怯んだ” と表現するのが正解かも知れない。
劇場ではメインが入れ替わるという支持もあったり、熱狂的なファンを獲得したことも確かで、大林宣彦監督は一作にして伝説を獲得した…これは大袈裟ではなく。
第3作は、百恵×友和映画『ふりむけば愛』(78年)、続く、4、5作では、『金田一耕助の冒険』(79年)、『ねらわれた学園』(81年)と、当時隆盛だった角川映画作品を監督した。
個人的には、その次にあたる第6作『転校生』(82年)の衝撃は忘れ難い。
山中恒の児童文学「おれがあいつであいつがおれで」を原作にした、体が入れ替わってしまった中学生の男女の青春映画。この手のファンタジー(これはあきらかな差別)で涙したのは初めての体験だったから…。
と、ここで振り返ると、大林監督のスタンスは『HOUSE ハウス』の頃から何も変わっていないことに気づく。そう、ずうーっと映画はおもちゃだった。
”ロイヤルオモイヤル” プロジェクト「大林宣彦監督作品35ミリフィルム上映」第1弾で『青春デンデケデケデケ』(92年)を31年ぶりに再見した。
『青春デンデケデケデケ』(1992年)
1965年春。高校入学を控えた藤原竹良(林泰文)は居眠り中、ラジオから流れてきた ”ベンチャーズ” のギターの音色の衝撃波を喰らったことではじまる、ロック漬けの高校生活3年間を描く、青春グラフィティーである。
原作は、91年に第106回直木賞を受賞した芦原すなおの同名小説で、発表の翌年というスピード映画化になる。
小説は文藝賞の応募規定に合わせるため、800枚から400枚に修正削減された。文藝賞受賞後に直木賞をW受賞したが、これは純文学誌「文藝」掲載からの初の直木賞受賞作品でもあり、何かと当時は話題になった。
その後、オリジナルバージョンは95年に私家版として出版された。
今回のロイヤル劇場での鑑賞は、初見以来の再見。記憶というものがいかに頼りないものであるのかを実感することになった。
オープニングと後半のバンド ”ロッキング・ホースメン” のデビューコンサートの一部しか憶えていなかった。それどころか、他の映画と混同していた部分すらあって、ほぼ、初見のような、良く言えば新鮮な感覚で鑑賞できたのは、ケガの功名だった。
主人公の高校生たちは、所謂、全共闘世代にあたるわけで、ヘルメットやゲバ棒ではなく、ギターとスティックで音楽に没頭した。言葉に語弊があることは承知の上で言うなら、純真で清々しい(政治的なを否定はしない)青春を描いている。
デフォメル気味の個性派揃いの登場人物が面白く、それを演じる役者のそれぞれの若き日を見るだけでも楽しくなる。
きれい事と否定するなかれ、高校時代って、こんなもん!とうなづくこと仕切り。
ずーっと注目していた大林監督らしい、またはお好きな? 男のお尻が何カットも登場する。
主演の竹良を演じた林泰文は子役としてデビューした俳優だが、大林作品では、86年の『野ゆき山ゆき海べゆき』に出演、映画デビューを果たし、続く『漂流教室』(87年)で主役に抜擢された秘蔵っ子でもある。最近でも話題になったテレビドラマ「VIVANT」にも出演している。
そして、大林演出は自由奔放な撮影、編集で、圧倒的に遊び続けている。50歳を過ぎても若々しい快作である。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。
語り手:覗き見猫
映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。