岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

優しくしなやかで陽光に満ちた穏やかな作品

2018年04月16日

一陽来復 Life Goes On

©Kokoro Film Partners

【ナレーション】藤原紀香、山寺宏一
【監督】尹美亜

東北のみなさんの言葉一つひとつが美しく胸に響く

 第16回CINEX映画塾にて『一陽来復 Life Goes On』を観た。上映が終了し、トークショーが始まる頃、愛知県西部を震源とする最大震度4の地震が発生し、ここ岐阜でも揺れを感じた。東日本大震災から6年後を描いた映画イベントの最中のこの出来事は、いつどこで起こるか分からない地震の恐ろしさをまさに体感した瞬間であった。
 映画は、プロデューサーも監督も女性であるからか、優しくしなやかで、陽光に満ちた穏やかな作品となっていた。出演された人たちの誰にも笑顔があり、辛かった体験を決して忘れないが、しっかり前を向いて生きている姿を見ていると、逆にこちらが勇気をいただける。
 「生きてて地獄ってあんだな。こっからどう生きていくか何も想像できなかったなあ。」「時間が解決するっていうのも聞くけど、時間が解決するとは思わなくって。ずっとこんな感じなんだろうなって」という悲しみの淵から「節目って言われることに関してよく分からない。何が変わるわけじゃないし、明日から急に何か違うことが始まるわけではない。ただ、そうやってみんなが刻みをつけてくれるから、一個ずつ納得していく」と一歩を踏み出せるようになる。出演されている東北のみなさんの言葉一つひとつが美しく胸に響く。
 この映画からは、人々が支え合って生きていく力の偉大さを大いに感じる事ができるが、冒頭の相撲甚句は、まさに助け合いが命を救うのだと歌っている。「生徒児童の600人、手に手をとって高台に、最善尽くして避難して・・・、人は奇跡というけれど、日頃の教訓心得よ」。これは日頃の防災教育の成果から釜石の小中学生のほとんどが助かった「釜石の奇跡」を歌ったもので、さまざまな方法で教訓を次代に繋げていくことができる。
 「風化はしていくけど、なかったことにしたくない」。見て聞いて感じる事のできる映像の力は偉大だ。東北魂が伝わってきた映画である。

『一陽来復 Life Goes On』は岐阜CINEX、大垣コロナシネマワールドで27日(金)まで公開中。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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