岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

6年後、今を見つめるドキュメンタリー

2018年04月16日

一陽来復 Life Goes On

©Kokoro Film Partners

【ナレーション】藤原紀香、山寺宏一
【監督】尹美亜

語らずとも凛として美しく生きる

 3.11 東日本大震災から6年。岩手、宮城、福島で今を生きる人々を見つめたドキュメンタリー映画。 3人の子どもを津波で失った夫婦がいる。木工工房を構えていた父親は、地震の後、子どもたちの安全を確認し、ほかの親族の安否確認のため、家を後にする。その時、家には子どもたちを残していった。津波はすべてを飲み込んでしまう。母親は看護師として、勤め先の病院で足止めをされ、家族の情報はすぐには届かなかった。その後の夫婦の間に起きたであろう出来事は、想像に余りある。映画はそれを言葉として導き出すが、感情のすべては見えるものではない。自宅のあった場所に、憩いの広場をつくり、かつての隣人たちが集う。そこには笑顔がある。
 津波ですべてを流され、マイナスからの再起となった牡蠣の養殖業者は、津波によって若返ったといわれる海に、新たな養殖方法を模索する。先を見つめる姿は明るく見える。
 全村避難の地域にありながら、避難を拒否して、米作を続けた農家がある。無農薬で育った稲は、化学肥料で栽培されたものとは違う。稲の緑が濃いと誇らしげに語る。震災後、最初に収穫された米は線量検査により、放射性物質は検出されなかった。しかし、その米は田んぼに戻され肥料と変わった。丹精込めて作った米を食べることも許されず、肥料として廃棄する虚しさ。それでも作り続ける。それは反抗か? 我儘か?信念か!
 被爆した牛には殺処分の命が下る。牛飼いの農家はそれを拒否する。飼料があり、飲ませる水があれば、命あるものを放置することはできない。牛によって食わせてもらった牛飼いの使命ではないか!たとえ、出荷できない牛とわかっていても…命は尊い。
 そろばん塾に通う5歳の少女がいる。父親は津波で失った。しかし、彼女には写真の中の笑顔の父がいる。暗算に集中する少女。その姿は凛として美しい。その後を生きる人々を優しく見つめた、この映画を象徴するシーンだ!

『一陽来復 Life Goes On』は岐阜CINEX、大垣コロナシネマワールドで27日(金)まで公開中。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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