岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

アンサンブル演技が見事な家族映画の秀作

2023年12月13日

愛にイナズマ

©2023「愛にイナズマ」製作委員会

【出演】松岡茉優、窪田正孝、池松壮亮、若葉竜也/仲野太賀、趣里/高良健吾、MEGUMI、三浦貴大、芹澤興人、笠原秀幸/鶴見辰吾、北村有起哉/中野英雄/益岡徹、佐藤浩市
【監督・脚本】石井裕也

絶妙なユーモアとペーソスの匙加減

石井裕也は史上最年少(28歳)でブルーリボン賞監督賞を受賞し、その後もコンスタントに優れた作品を撮り続けている日本を代表する映画監督のひとり。

石井裕也監督の商業映画はすべて見ている。「川の底からこんにちは」、「舟を編む」、「ぼくたちの家族」、「夜空はいつでも最高密度の青色だ」、「茜色に焼かれる」は特に好きな作品だ。中でも「茜色に焼かれる」は、コロナ禍の日本を舞台に次々に理不尽な出来事に苛まれるシングルマザーを描いた入魂の傑作であった。

石井裕也監督作品には、家族をモチーフにした映画が多い。自らのオリジナル脚本によるこの「愛にイナズマ」も家族の再生を描いた映画である。

  主人公の折村花子(松岡茉優)は念願のデビューを目前に控えた映画監督。序盤で描かれるのは映画業界に於ける年長者のハラスメント等で、新人監督のチャンスが奪われてしまう理不尽さ。

だが折村花子は屈することなく、運命的な出会いをした舘正夫(窪田正孝)と共に10年以上音信不通だった家族のもとに帰り、父(佐藤浩市)や2人の兄(池松壮亮と若葉竜也)に自身を演じてもらう家族映画を撮ろうとする。

この映画づくりが、バラバラだった家族の絆を蘇らせる展開が面白い。

花子の幼少時代に家を出た母親の安否と失踪原因。癌であることをなかなか話せない父親の知られざる過去。喧嘩ばかりしているが実は妹思いな長男。神父になっている真面目な次男。家族が修復されていく過程が、ユーモアとペーソスの匙加減が絶妙なエピソードの積み重ねで描かれる。

アベノマスクを使ったユーモラスなシーン等、社会風刺も盛り込んだ脚本と豪華キャストによるアンサンブル演技が素晴らしい。

語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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語り手:井上 章

映画鑑賞歴44年。出来る限り映画館で観ることをモットーとし、日本映画も外国映画も、新作も旧作も、ジャンルを問わず観てきたおかげか、2006年に、最初の映画検定1級の試験に最高点で合格しました。

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