岐阜新聞 映画部

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北欧モダニズムの巨匠、アアルトに迫る人間ドキュメンタリー

2023年11月24日

アアルト

©Aalto Family ©FI 2020 - Euphoria Film

【監督】ヴィルピ・スータリ

温もりのある、人に優しいデザイン

フィンランドが生んだ巨匠で、北欧モダニズムの香り高い建築物や家具を作ったアルヴァ・アアルト(1898-1976)。彼は生涯に200を超える建築作品と、40を超える家具や照明作品、フラワーベース、テキスタイルなどをデザインした。

残念ながら日本に彼の建築物は無いが、家具とくにチェアは、一見シンプルな見た目をしているが実は計算されつくした美しさが仕込まれていて、デザイン性の高いインテリアとして日本でも高い人気を誇っている。

中でも脚が、無垢材にスリットを入れてベニヤ板を挟んだ曲げ木構造となっている木製の丸椅子<スツール60>や、美しい曲線と快適な座り心地の<パイミオ・チェア>は、誰でも一度は目にしたことがあるだろう。

本作は、日本でも人気の高い「アアルト」の創造性や、丸みを帯びた人に優しいデザインが生まれた背景には何があったのかに迫った、人間ドキュメンタリーである。

もちろん彼は天才ではあるが、最初の妻アイノの支えは大きい。例えば代表作<スツール60>の原型となった三本脚のスチールパイプチェアのデザインはアイノであるし、1935年に出来た家具販売会社<アルテック>の設立にも関わっている。

アイノとは1924年に結婚しているが、新婚旅行先のイタリアを大いに気に入り、特にフィレンツェのルネサンス建築には影響を受けたようだ。また来日したことは無いが、日本の伝統や文化にも興味を持ち、障子や襖,簾などに影響を受けたデザインを取り入れている。

1940年代~50年代は赤レンガを多用した建築物が多かったことから<赤の時代>と呼ばれている。

ヴィリピ・スータリ監督は、アイノとの手紙や、彼と親交のあった建築家や友人の証言を元に、アアルト建築や家具のデザインが持つ温もりを観客に伝えていく。そして、あまり注目されることのなかった最初の妻アイノと再婚したエリッサにもスポットをあてるところが何とも素晴らしい。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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