岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

子猫との出会いから生まれる少女の成長物語

2023年11月16日

ルー、パリで生まれた猫

© 2023 MC4 – ORANGE STUDIO – JMH & FILO Films

【出演】キャプシーヌ・サンソン=ファブレス、コリンヌ・マシエロ、リュシー・ローラン、ニコラ・ウンブデンシュトック
【監督】ギヨーム・メダチェフスキ

人と猫の微妙な距離感を話に落とし込んだ巧な構成

コピーにもあるような、"特別な猫との出会い" があった。私は猫派です。

昔のはなし。1匹の野良猫が家に住みついて暫く経った頃、そのキジトラの雄猫がチャトラの雌猫を連れて来た。どうもその雌猫は身籠っているようで、大きなお腹を抱えていた。その同行が偶然ではないような予感は見事に的中して、家の裏手にあった物置きの軒下で出産した。雄猫は雌猫に安住できる場所を提供したのか? これは猫にしかわからない。

用意してやったダンボール箱で一晩を過ごしたはずだったが、翌朝には箱は空っぽになっていた。本能なのかもしれないが、猫は子育ての場を警戒して移動することはよくある。

その翌々日だったか? 雄猫に異変があり、異様な鳴き声とともに吐血した。危なげな後ろ姿を見送った記憶はあるが、雄猫の姿を見たのはそれが最後だった。母猫も同じ症状で、こちらはその死を見送ることになった。

悪い物でも食べたのか? 確かなことはわからない。母猫が亡くなった夜、裏の手の隣家の薮あたりから猫=子猫の鳴き声が聞こえてきた。

いつまでたっても鳴り止まない子猫の "悲鳴" 。翌日の夕方には雨が降り出し、いてもたってもいられなくなり、懐中電灯片手に薮に分け入った。救出した子猫3匹はかなり弱っていて、拾い上げた時の掌に感じた冷たさは今も記憶の体感にある。生き残ったのは1匹の雌だった。

パリに住む10歳のクレムは、屋根裏で生まれたばかりのキジトラの子猫を見つける。母猫とは逸れてしまった子猫を、クレムは "ルー" と名づけて一緒に暮らすことになる。

クレムを悩ませているのは両親の口喧嘩。悲しくなる荒んだ心を癒してくれるルーは、次第にかけがいのない存在となる。

森の中の別荘での新たな出会いから生まれる少女の成長物語は、禁じ手気味のちょっとずるい設定で琴線に触れてくるが、猫好きに堪らない一編である。

私が出会った猫は、その後6匹の母となった。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (5)
  • 検討する (0)

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

ページトップへ戻る