岐阜新聞 映画部

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姉弟の常軌を逸したいがみ合い、ちょっときつめなフランス映画

2023年11月16日

私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター

©2022 Why Not Productions - Arte France Cinema

【出演】マリオン・コティヤール、メルヴィル・プポー、ゴルシフテ・ファラハニ、パトリック・ティムシット
【監督】アルノー・デプレシャン

知らず知らずのうちのライバル関係

日本映画で姉弟モノといえば、すぐに『おとうと』が思い浮かぶ。幸田文原作で、1960年の市川崑監督版は岸恵子-川口浩。1976年の山根成之監督版は浅茅陽子-郷ひろみ。2010年の山田洋次監督版は吉永小百合-笑福亭鶴瓶。しっかり者の姉と放蕩物の弟という関係で、切っても切れない深い絆を優しく包み込むように描いており、羨ましいほどの仲の良さだ。

ところがフランス映画アルノー・デプレシャン版の姉弟は、常軌を逸したいがみ合いの物語だ。有名な舞台女優の姉アリス(マリオン・コティヤール)と詩人の弟ルイ(メルヴィル・プポー)は、会ったら言い争いになる関係性。

フランス人の自己主張をはっきり言う気質に加え、2人が共に芸術家で自己表現を生業としているところもあるからなのか、ののしり合いも独創性にあふれており芸術的だ。

こんなことになってしまったのは、両親の子どもに対する育て方にも原因があると思う。おそらく姉アリスも弟ルイも、子どもの頃から秀でた面があったのであろう。2人を競わせていたに違いない。

ルイが小さい頃、お父さんから「モーツァルトは7歳の時にもう作曲をしていた」と知ったようなことを言われる。父は「はげまし」と思って言ったのだろうが、ルイにとってみれば「姉と比べられた」ととらえさぞかし傷ついたことだろう。おそらくこのような繰り返しの中で、アリスとルイは知らず知らずのうちにライバル関係になっていったのだ。

長年疎遠だった2人が、両親の交通事故で再会することになる。緊迫した状況から、2人の関係性はどうなっていくかがテーマだが、末の弟でゲイのパートナーがいるフィデル(バンジャマン・シクスー)の存在がホッとさせる。彼は一家の光であり、ある意味癒しの存在だ。

原因を追求し関係修復するよりも「憎み合う」ことのみの関係性が、いかに不毛なものなのかよくわかる。ちょっときつめなフランス映画だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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