岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

家族揃って楽しめる、安心の人情ホームドラマ

2023年11月14日

こんにちは、母さん

©2023「こんにちは、母さん」製作委員会

【出演】吉永小百合、大泉洋、永野芽郁 ほか
【監督】山田洋次

山田監督90本目で吉永小百合さん123本目

本作の山田洋次監督(92)は、つい先日ロイヤル劇場で上映された『青春残酷物語』の大島渚監督の同期で、CINEX映画塾にも来ていただいた篠田正浩監督の1つ下だ。

同世代の監督たちが、「松竹ヌーベルヴァーグ」と呼ばれて脚光を浴びる中、山田監督は地味な存在で、「僕は取り残された感じでした」と当時を述懐している。

しかしながら1961年に中編の『二階の他人』でデビューして以降、蒲田=大船調を正統に受け継ぐ人情喜劇の名手として実力を積み重ね、1969年の『男はつらいよ』シリーズからは松竹の屋台骨を支える監督となり、『家族』(1970)や『幸福の黄色いハンカチ』(1977)などの時代を捉えた人間ドラマなども成功、日本を代表する監督となった。

『こんにちは、母さん』は、山田監督の90本目の監督作で、吉永小百合さんの123本目の出演作である。

思えば私が映画ファンになった1974年の8月に観たのが、吉永さんがマドンナの『男はつらいよ 寅次郎恋やつれ』で、50年後にも同じコンビの映画が観られるなんて感慨ひとしおだ。

人一倍思い入れのある山田監督の作品を冷静に評価するなどできっこないが、それでも本作は、山田監督のプロ魂が発揮された最良のプログラムピクチャーであると断言できる。松竹喜劇の王道である「明るく、楽しい」をモットーにした、家族揃って楽しめる安心の人情ホームドラマになっている。

吉永さんが、実年齢そのものをほぼノーメイクで演じている映画は今まで観たことがなく、吉永さんと大泉洋さんとの関係が姉弟でなく親子という設定なのは、山田監督しか出来ないと思う。

演出も好調で、みんなが集う吉永さんの足袋屋の茶の間は、まるで「とらや」のよう。脇役陣も多芸多才で、いささかもダレさせない。スカイツリーを巧みに取り入れる現代性と、スマホを使わない批評性は山田洋次監督らしい。肩のこらない好編だ。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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