岐阜新聞映画部映画館で見つけた作品6月0日 アイヒマンが処刑された日 B! 火葬のない国で火葬施設をつくる極秘プロジェクト 2023年11月14日 6月0日 アイヒマンが処刑された日 © THE OVEN FILM PRODUCTION LIMITED PARTERNSHIP 【出演】ノアム・オヴァディア、 ツァヒ・グラッド 、ヨアブ・レビ、トム・ハジ 、アミ・スモラチク 、ジョイ・リーガー 【監督】ジェイク・パルトロウ アイヒマンの処刑に関わる市井の無名な人々 本作は、ユダヤ民族移送の中心的人物のアイヒマンが、逃亡先のアルゼンチンから連行され、イスラエルで裁判を受け処刑されるというニュースを刻々と追いながら、処刑された後の火葬の準備の過程とそれに携わる人々を主役にした、ナチスもののスピンオフ作品である。 アイヒマンが処刑された後の遺体を、崇拝阻止のため火葬し遺灰を海に撒くためには、火葬習慣のないイスラエルで火葬施設を作らなければならない。極秘プロジェクトであるため、目的を知らされないまま設計に係るが、そう簡単に出来るはずもなく試行錯誤を重ねていく。 アイヒマンは、今年3月CINEXでも公開された『ヒトラーのための虐殺会議』、いわゆるヴァンゼー会議で議事録を担当するほどの几帳面な役人で、このイスラエルでの裁判を傍聴したハンナ・アーレントによれば「与えられた命令を高い技術的能力と専門的知識でこなしていくスペシャリストで、従順に命令に従う小役人。大犯罪に加担した意識の無さは、悪の凡庸さである」としている。 この一見平凡な小役人のための火葬炉を作るのは、市井の町工場の人々に居場所のないリビア系移民の少年ダヴィッド。こちらも無名の平凡な人々だ。 興味深いのはこのダヴィッドだ。彼は「アラブ系イスラム教徒」ではなく「アラブ系ユダヤ人」。彼も映画の中で問われて言い直しているが、正確にはイスラエル人だ。 映画でも「ユダヤ人の定義」に言及されている。ユダヤ人は世界中に分布しており、他民族との混血等により「人種」概念で捉えるのは困難で、「ユダヤ教を信仰する人々」と捉えるのがおおむね正しい。なのでナチスが唱えた「ユダヤ人=劣等民族」観は、何の根拠もないでっち上げということがよくわかる。 裁判はアイヒマンに弁護士を付け、上級審でも審議する。合法的にあろうとする様子がよくわかる。 この冷静さで、ガザ地区への攻撃を一刻も早く止めて欲しいものだ。 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 100% 観たい! (7)検討する (0) 語り手:ドラゴン美多中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。 2024年09月26日 / どら平太 日本映画黄金時代を彷彿とさせる盛りだくさんの時代劇 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 助けを求める人はもはや敵ではなく、ただの人間だ 2024年09月26日 / 潜水艦コマンダンテ 誇り高き決断 海の男たちが下す決断を描くヒューマンドラマ more 2021年11月10日 / 【思い出の映画館】会津東宝(福島県) 歴史と文化の東北の町で子供たちに夢を贈り続けた。 2018年07月25日 / フォーラム仙台(宮城県) 映画館はみんなが笑顔を取り戻せる場所なのだ 2020年10月28日 / 別府ブルーバード劇場(大分県) 子供に夢を与えたいという思いから始まった映画館 more
アイヒマンの処刑に関わる市井の無名な人々
本作は、ユダヤ民族移送の中心的人物のアイヒマンが、逃亡先のアルゼンチンから連行され、イスラエルで裁判を受け処刑されるというニュースを刻々と追いながら、処刑された後の火葬の準備の過程とそれに携わる人々を主役にした、ナチスもののスピンオフ作品である。
アイヒマンが処刑された後の遺体を、崇拝阻止のため火葬し遺灰を海に撒くためには、火葬習慣のないイスラエルで火葬施設を作らなければならない。極秘プロジェクトであるため、目的を知らされないまま設計に係るが、そう簡単に出来るはずもなく試行錯誤を重ねていく。
アイヒマンは、今年3月CINEXでも公開された『ヒトラーのための虐殺会議』、いわゆるヴァンゼー会議で議事録を担当するほどの几帳面な役人で、このイスラエルでの裁判を傍聴したハンナ・アーレントによれば「与えられた命令を高い技術的能力と専門的知識でこなしていくスペシャリストで、従順に命令に従う小役人。大犯罪に加担した意識の無さは、悪の凡庸さである」としている。
この一見平凡な小役人のための火葬炉を作るのは、市井の町工場の人々に居場所のないリビア系移民の少年ダヴィッド。こちらも無名の平凡な人々だ。
興味深いのはこのダヴィッドだ。彼は「アラブ系イスラム教徒」ではなく「アラブ系ユダヤ人」。彼も映画の中で問われて言い直しているが、正確にはイスラエル人だ。
映画でも「ユダヤ人の定義」に言及されている。ユダヤ人は世界中に分布しており、他民族との混血等により「人種」概念で捉えるのは困難で、「ユダヤ教を信仰する人々」と捉えるのがおおむね正しい。なのでナチスが唱えた「ユダヤ人=劣等民族」観は、何の根拠もないでっち上げということがよくわかる。
裁判はアイヒマンに弁護士を付け、上級審でも審議する。合法的にあろうとする様子がよくわかる。
この冷静さで、ガザ地区への攻撃を一刻も早く止めて欲しいものだ。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。
語り手:ドラゴン美多
中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。