岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

リチャード3世の悪名を晴らす主婦の奮闘記

2023年11月14日

ロスト・キング 500年越しの運命

©PATHE PRODUCTIONS LIMITED AND BRITISH BROADCASTING CORPORATION 2022 ALL RIGHTS RESERVED.

【出演】スティーヴ・クーガン、サリー・ホーキンス、ハリー・ロイド、マーク・アディ
【監督】スティーヴン・フリアーズ

サリー・ホーキンスの好演を支えるファンタジーを交えた流暢な演出力

フィリッパは行き詰まっていた。

職場ではそつなく仕事をこなして、それなりの貢献もしていると思っていたのに…。

上司からは、理不尽にも、新たなプロジェクトチームから外れることを告げられる。

そんな職場での出来事を別居中の夫ジョンに愚痴ると…。

生活費のこともあるから短気を起こさずに、仕事を続けるように、とアドバイスにもならない現実を突きつけられ意見される。

そんなこんなでふさぎ込んでいたある日。息子の付き添いで観劇に出かける。上演されたのはシェイクスピアの「リチャード3世」だった。

リチャード3世は、15世紀のイングランド国王で、長くに渡った王位継承をめぐる内乱、通称 "バラ戦争" (1455~1485)の最後に登場する。

その王位継承の過程は、正統な経緯を経たものではなかったことから、血族間の暗殺を含む残忍な行為による略奪というイメージが先行していることは史実でもあった。

そのリチャードを戯曲にしたのがシェイクスピアで、その死後、100年以上を経過した1593年頃に発表された。

戯曲の冒頭にある独白によれば…

「おれは出来そこない、不様な体に産みつけられ、いびつ、未完成、半出来のまま、人間世界にひり出されてしまった。何しろ片足が短くて不格好だから、よたよた歩いていると、犬さえにも吠えかけられる。明るい太陽のもとを大手を振って歩く選ばれた者ではない。だから、おれは決めた!悪党になる!」

シェイクスピアはリチャードを自虐的な反抗心から、邪悪な陰謀を企み王位を奪う残虐な男に創造した。

フィリッパはこの悪名高きリチャードの既製イメージを世間から不当な扱いを受ける自らに重ね、その真実に迫ろうとする。

この話が実話をもとにしていることに驚くが、ファンタジーの遊び心を加味した流暢な語口で、清々しい余韻を残す映画になっている。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

観てみたい

100%
  • 観たい! (7)
  • 検討する (0)

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

ページトップへ戻る