岐阜新聞 映画部

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ヒッチコック映画の面白さの神髄がわかるドキュメンタリー

2023年10月30日

ヒッチコックの映画術

© Hitchcock Ltd 2022

【監督】マーク・カズンズ

解説するのはヒッチコック自身

アルフレッド・ヒッチコック(1899-1980)は、映画史上で最も有名な監督の一人であり、その影響力は計り知れないが、実はアカデミー賞で監督賞を1度も受賞していない(ノミネートは5回)のだ。

どちらかというとサスペンス映画を得意とする娯楽映画の職人と思われれていたヒッチコックを、人間の本質を鋭くえぐる偉大な映画作家として評価したのは、フランス・ヌーベルヴァーグの若き俊英たちだ。ロメールやシャブロル、トリュフォーやゴダールなどが「カイエ・デュ・シネマ」の批評家だった時代、ヒッチコックを映画作家として高く取り上げ熱烈に支持を表明した。

本作は、数多くの演出テクニックを考案し、観客を驚かせ楽しませてきたヒッチコックの映画術を、わかりやすく紐解いたドキュメンタリーだ。マーク・カズンズ監督の膨大で詳細な映画知識の引き出しの中からヒッチコックを取り出し、彼の卓越した映画テクニックを明快に解説していく。しかもそれを語るのはヒッチコック自身という趣向であり、もちろん声優さんがやっているのだが、それがすこぶる面白い。

ヒッチコックはトリュフォーとのインタビューの中で、ミステリーとサスペンスを明確に区別している。彼が描くのは、サスペンス的状況に陥った時に生まれる人間の恐怖や葛藤であり、ミステリーでの謎解きは重要でなく、ストーリーはその心理描写を映像で表現するための状況設定でしかないと答えている。

取り上げられるテクニックとしては、『断崖』(1941)で夫が妻に飲ませるためのミルクに注目させるため、豆電球を入れて輝かせたシーン。『めまい』(1958)の、カメラレンズをズームインさせながら、カメラ本体は被写体から引き離す「めまいズーム」。そして有名な『サイコ』(1960)のシャワーシーンのモンタージュ、などだ。

ヒッチコック映画の面白さの神髄がわかる、探求型ドキュメンタリーである。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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