岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

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尾道を舞台に心暖まる豆腐店の父娘の物語

2023年10月26日

高野豆腐店の春

🄫2023「高野豆腐店の春」製作委員会

【出演】藤竜也、麻生久美子、中村久美 
【監督・脚本】三原光尋

これも絶滅危惧種 商店街のお節介親父たちの画策が気恥ずかしい

例えば、『東京物語』(小津安二郎・監督/1953年)。

大小の船が碇泊、行き来する港。その海に面した坂道や階段の多い住宅街。神社の鳥居、寺の本堂の屋根。郷愁に誘う日本の風景ー尾道。

大林宣彦監督は尾道に生まれた。作品には度々、この尾道の風景が映し出される。何も特別なものではない。かつては何処にでもあるものたち。

『高野豆腐店の春』は、その尾道で豆腐店を営む父と娘の物語である。

まだ、明けきらぬ朝。辰雄(藤竜也)は店の作業場に現れる。手慣れた様子で、仕込んであった大豆を確認して、その日作る豆腐の仕込みにかかる。

傍には、娘の春(麻生久美子)がいて、じっと辰雄を見守る。父の領分を侵すことなく、自分の仕事をこなす。阿吽の呼吸のような父娘の日常。

大豆と水とにがり、だけで作る豆腐。シンプルだけど難しい。穏やかそうでも頑固な職人・辰雄、そのもののような豆腐。そんな辰雄にもひとつ気がかりなことがある。

二人三脚で豆腐店を営む娘の春は出戻りで、普段は明るく気立良く、店を切り盛りしてくれているが、その将来を気にかけないわけにはいかない。そんなある日、病院で持病である心臓の具合が芳しくないことを告げられ、娘を思う感情は一気にざわつき始める。

辰雄を演じるのは、スクリーンデビューから60年を越す名優藤竜也。デビュー当時のちょっと尖った藤のイメージを知っていると、この歳の重ね方には感慨ひとしおではないだろうか?

監督の三原光尋とは『村の写真集』(2005年)、『しあわせのかおり』(2008年)に続き、3度目の主演タッグで、写真屋、料理人、豆腐屋を演じる、いわば "職人3部作" となる。

春を演じるのは、日本映画を代表する "映画女優" 麻生久美子。26年ぶりの藤との共演で、見事なアンサンブルを見せている。

真っ白な豆腐のように純な物語は心暖まる。

語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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語り手:覗き見猫

映画にはまって40数年。近頃、めっきり視力が衰えてきましたが、字幕を追う集中力はまだまだ大丈夫です。好きなジャンルは? 人間ドラマ…面白くない半端な回答…甘い青春映画も大好きです。

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