岐阜新聞 映画部

いま、どこかで出会える作品たち

Meet somewhere

豆腐のようにシンプルな、心温まる人情喜劇

2023年10月26日

高野豆腐店の春

🄫2023「高野豆腐店の春」製作委員会

【出演】藤竜也、麻生久美子、中村久美 
【監督・脚本】三原光尋

天然の映画撮影の都・尾道へ誘われること間違いなし

本作は尾道を舞台に、昔ながらの豆腐屋を営む職人気質の父・辰雄(藤竜也)と、勝気で頑固な出戻り娘・春(麻生久美子)とのあけっぴろげな親娘関係を軸に、些細なことで喧嘩したり自分ごとのように人の心配をするチョットお節介な商店街の面々が彩る、心温まる人情喜劇である。

それは現代では山田洋次監督の映画に代表される、<人間社会に起こる身近な出来事を通して、その中に人間の真実というものを直視することである。>という、松竹大船調の神髄を極めているようにも感じる。

まずは舞台の尾道。どこもかしこも映画のロケ地にふさわしい、まさに天然の映画撮影の都だ。『東京物語』や大林宣彦監督の諸作が有名だが、最近ではCINEX映画塾でお馴染みの俳優・須藤蓮さんの初監督作『逆光』の舞台となった。『高野豆腐店の春』ともども、ロケ地巡礼に誘われること間違いない。ちなみにロケ地巡りが趣味の私は、家族旅行で昔行ったことがある。

続いてお豆腐。その製造工程がお仕事ムービーの如く丹念に描写されるので、食べたくなってくること請け合いだ。私は尾道では食べてないが、冬になると京都へ湯豆腐をよく食べに行った。南禅寺の奥丹や順正、天龍寺の西山艸堂など絶品である。

豆腐は、煮た大豆の絞り汁(豆乳)を凝固剤(にがり)によって固めただけの加工食品で、いたってシンプルな食品だ。だからこそ腕の差が出てくるのだが、映画のつくりもそれに合わせたかのようにシンプルだ。カメラはフィックス(固定)で、撮影・編集はカット割りのみ。シンプルなお話と芸達者な俳優の演技に集中できて、画面の持つ意味など考えなくていい。

映画の内容も、人間の善意の部分を紡いでいき、誰一人として悪い奴は出てこない。春が選んだ婚約者が、イケメンのシェフでなく、駅ナカのチンチクリンというのも期待通りの結末で、安心の嬉し笑いが出てくる。「明るく、楽しい」人情映画である。

語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白さから映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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語り手:ドラゴン美多

中学三年の時に見た「日本沈没」「燃えよドラゴン」のあまりの面白から映画の虜になって四十数年、今も映画から夢と希望と勇気をもらっている、ファッションチェックに忙しい中年のおっさんです。

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